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北「あー、もうほら。やっぱお前らうるさくなったじゃん」
慎「え？」
樹「こいつさっき、お前たち来たらうるさくなるって喜んでたの」
ジ「じゃあもっとうるさくする？」
北「なんでもっとうるさくするんだよ！」
ジ「だってもっと喜ぶじゃん？」
慎「じゃあアカペラ大会開催する？声量マックスでね！」
京「それならガチでやるよ」
北「よそでやれよ！」
ジ「わー！北斗が喜んでるー！Ahahaha！」
樹「じゃあ高地からな！」
高「バカかよ！やらねえよ」
教室内に５人の笑い声がどっと広がる。
うるさいけど、感じ慣れた居心地に俺はすっかり気持ちよくなっていて、俺も笑っている。
「ねえ、うるさいんだけど」
俺たちの笑い声が引いてきた時に女子の声が届いた。
その瞬間、笑いはぴたりと止んで、俺たち６人の口から一斉に声が出た。
「「「「「「え？」」」」」」
「だから、うるさいんだって」
静かだけど、怒りを含んだ声のした方を６人同時に見る。
隣の列、俺の席の横。
ジ「えっとー」
５人が俺を見て、「誰？」と目で聞いている。
……誰、だ？
クラスメイトの名前を覚える必要がないと思っていた俺は、HRでやった簡単な自己紹介を聞いていなかった。
北「……すみません」
とりあえず謝った。
女子は少し細まった目で睨むようにして俺を見ている。
「なに？」
すごく迷惑そうな顔で女子にそう言われて、俺は自分がこの女子を凝視していたことに気づいた。
北「え、あ。……すみません」
俺、今、この女子が纏っている雰囲気に吸い込まれていた。
チャイム音が鳴る。
タイミング良くなってくれたその音に、ほっと心を撫で下ろした。
でも、なぜだか心臓がうるさい。
樹「うわ、もう昼休み終わりかよ。だりー」
樹が立ち上がって温もりが俺から離れたというのに、身体に熱を感じる。
慎「戻りますかー！」
京「高地、次の授業なんだっけ？」
高「俺たちは数学だけど、お前は違うだろ」
京「あ、そっか。クラス変わったんだった」
高「バカかよ」
京「うるせえよ」
ジ「じゃあね！うさぎちゃん！」
北「だから、俺は人間だわ！」
樹「あ、放課後いつもんとこな」
北「わかった」
「じゃ！」と去る５人を見ていた目を、そろりとさっきの女子に向ける。
女子は何事もなかったかのように、無表情で次の授業の英語の準備をしている。
なぜだか少し前の自分を見ているみたいだと感じた。
名前、なんだっけ。
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作者名：雨中遊 | 作成日時：2021年7月19日 17時
