1(hokuto side) ページ1
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hokuto side
春の暖かさを含んだ風に撫でられる度に、俺はため息を漏らした。
ほら、また。俺の口からひとつ出た。
昼休みの教室内に溢れる喧騒に見事に飲み込まれたそれに、まるで俺の存在感と同じだな、なんて自分自身を嘲笑ってしまう。
高校2年になって一新したクラス。
その初日の今日。気づいたら、既にいくつかのグループが出来上がっていた。
朝のHRのとき、なんとなく教室内を見渡した時点でわかった。
ヒエラルキーの上層に分類される奴ら、中層に分類される奴ら、下層に分類される奴らが。
それに、俺はどの層にも分類されないこともわかった。
というか、見なくてもわかっていた。
これまでの人生を振り返れば簡単なことだ。
つまり、小学生のときも中学生のときも、グループに属していなかった。
もっとわかりやすく言うと、友達がいなかった。
俺は独りだった。
でも、去年は違っていた。
友達と呼べる存在が5人もできた。それも一気に。
俺にとっては十分に仰天する出来事だった。
そんな5人とはクラスが別になってしまった。
ああ、また独りの学校生活か、なんて少しばかり落ち込んだ。
それに、あの5人とはもう友達でない気もした。
きっと新しいクラスで新しいグループを既に作り上げている。
あの5人の人間性なら容易く想像できる。
きっと、俺のことなんて頭の中から消えかかっているだろう。
また俺の口からため息がひとつ。
独りに慣れていた俺に戻るまで、時間がかかりそうな気がしている。
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作者名:雨中遊 | 作成日時:2021年7月19日 17時