【幽遊白書】重なることなき世界【飛影】

Story21 ページ23

裕加は無理をしない方が良い、と言う蔵馬の一言により、飛影の案に加わらなかった。目の前には下から桑原、蔵馬、飛影と梯子のように積み上がっていく。

「行っくぜー！」

幽助が掛け声と共に三人を足場に登っていくが僅かという所で届かない。

「くっそ…届かねぇ！」

ヒュンと風を切るような音がする。裕加のクナイだ。二本が窓枠の下に刺さる。

「幽助、それに掴まって」

何とか難を乗り越え、飛影の案は成功した。

「やったぁ！」
「桑原、蔵馬、飛影、裕加サンキュー！戻ったらブリブリ奢ってやらぁ！」
「死ぬんじゃねぇぞー！」

幽助が塔の最上階へと去った後、三人は養殖人間に囲まれる。裕加は対岸の火事視かのように一体たりとも養殖人間を倒そうとしない。自分の身すら護ろうとせず、ただ虚無を見つめていた。



養殖人間とは文字通り人工的に作られた生命体だ。彼ら…と呼ぶべきかは分からないが、彼らは欲深き悪で満ち溢れていた人間達に虐殺されていた。

(満ち溢れていた、それは語弊か。今もなお満ち溢れていると思う)

切り刻んだり、嬲っていたりと方法は様々だったが、目の前で確かにそれは行われていた。いつか自分もあんな風にされるのではないかと酷く怯えていた。

(今、飛影達が養殖人間を倒していく姿を見て思い出したんだ…)

何も感じずただ殺される為だけに作られ死んでいく。そして、何も映さない虚ろな瞳が恐ろしかった。

体が小刻みに震える。この忌々しい記憶から数年も経つというのに、思い出せば恐怖する。自然と体が縮こまり、その場に座り込む。意識が薄れていくような、そんな錯覚がした。

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