【幽遊白書】重なることなき世界【飛影】

Story19 ページ21

木が生い茂る深い森の中。二人の男女がいた。一人は妖怪、一人は“人間“である。

互いに黒髪、黒目。違うのは抱いている想い。

彼は一方的に少女に剣戟を浴びせる。少女はそれを何も持たない手で受け止めることはなく、ただ避けるのみ。

『いいのかい？避けてるだけではいづれ死ぬぞ』

その言葉に少女はピタリと動きが止まる。彼の剣もピタリと動きが止まる。

『どうして切らないの？』

少女には分からなかった。『避けてるだけでは死ぬぞ』と言われた為、あえて動くのを止め、殺してもらおうと考えたのだ。

『いいかい？人生何事も逃げていてばかりでは駄目なんだ。時には立ち向かうことも必要なんだよ。それが今』

少女には分からなかった。自分が何かに立ち向かう必要が。

『生きるんだ、裕加』

少女には分からなかった。八歳という幼い自分が何故こんな目に合っているのかが。

“人間“である自分を実験材料か玩具かのように扱う者達。誰が大人なのか子供なのか、誰が人間なのか妖怪なのか、何も理解したくなかった。


“生きている意味が分からなかった“


貴方は他の者達とは違った。裕加を人間として接し、沢山のことを教えてくれた。人間と妖怪の在り方、霊気の高め方、剣術。そして…


“生きる“と言う言葉を教えてくれた。

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