第百九話 ページ24
.
デートもほぼ終盤、夕日が傾き始めた時ピコン、と普段は鳴らない通知音が鳴り響いた。
アプリを起動させれば沖矢さんからの�犧Ｆ�、待ってる。�瓩犯爐�らは考えられないほど簡素に書かれた文が。
どうやらこの間の沖矢さんの声が変わったことは嘘ではないようだ。
｢……沖矢。｣
｢…あ、これは。｣
｢へぇ、僕とのデートの傍ら他の男とも約束を…。｣
｢そ、それは違う！｣
｢なんで、僕じゃないんだ。｣
｢……安室さん？｣
必死にガードしていたはずなのにいつの間に見られていたのやら。
いつもとは雰囲気の違う安室さんの様子に怖気づき、少しだけ後退するも時既に遅し。
安室さんのゴツゴツした手が私の手首を掴んでぎり、と力を込める。
｢あ、むろさん、痛い…！｣
｢沖矢のことが好きなのか？だから、僕がどれほどアプローチしても駄目だったのか？｣
｢違うよ。話を聞いて！｣
｢話なんて聞いてられるか。｣
怒った顔と、曇った顔が交互に姿を現してこんな安室さんの姿を始めてみた私はただただ困惑するより他なく、必死に説き伏せようとする。
しかし、そんな様子を気にすることなく安室さんは私の手首を力強く握ったまま人気のない方へとずんずん歩いていく。
怖い、初めて安室さんを見てそう思った。
楽しそうな顔をする沢山の人々と相反して私たちの顔は曇るどころかどんどん濁っていくような感覚。
壁に押し付けられると顎を掬い取られ安室さんの透き通るようなマリンブルーと瞳と絡まる。
でも、その目はいつもみたいに優しい瞳じゃなくて、人をも殺してしまいそうなほど冷酷で残忍な顔で。
｢どうしたら、こっちを向いてくれる？｣
｢それ、は。｣
｢無理矢理にでも僕のものにしちゃえばいいのか？｣
｢安室さん、やだ。離して。｣
｢答えろ。｣
低く、地の這うような声に反応して肩を震わせる。嫌だという意志に反して安室さんの顔が徐々に近付いてくる。
｢や、だ！安室さん！！｣
力の入る限り、厚い胸板を向こう側へ押しやると何かに取り憑かれていた安室さんの顔が突然晴れ、大きく双眸が見開かれた。
｢……ご、め｢わ、私帰るね。バスあると思うし…！今日は楽しかったよ、ありがとう。｣ちょ、まっ…！｣
後ろで安室さんの制止する声が聞こえてきたけどそんなの今更気にしてられない。
小さく小さく息を吐き出すと大勢の人の波の中に一人、小さくけれどもはっきりと嗚咽が漏れ出した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1906人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「名探偵コナン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花帆 - こんばんは、安室さんとの両想い…！！甘くてトキメキます(*´ω｀*)これからの展開も楽しみに応援しております♪ (2018年7月17日 4時) (
レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
瑛奈(プロフ) - 初めまして！いつも楽しく読ませていただいます！ついに夢主ちゃん、安室さんが好きだって自覚しちゃいましたね（笑）今後の展開で降谷さんとしてはどう動くのか楽しみです（笑）更新大変かもしれませんが頑張ってください！ (2018年7月1日 15時) (レス) id: 7374128719 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 更新ありがとうございます！夢主さんどんどん大変になってきますね…実質は相手２人なのに(笑) 目が離せません！ (2018年6月18日 9時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
mao(プロフ) - 更新ご苦労様です！主人公うらやましい！(笑)安室さんファイトって応援したくなりますね！ (2018年6月17日 20時) (レス) id: 5697599ead (このIDを非表示/違反報告)
来夢*ﾟ(プロフ) - salomeさん» もう、いろんな人たちがてんやわんやしてますね…！工程通り進めましたが中々書く方はハードです…笑 これからどうなるかどうぞお楽しみに！ (2018年6月17日 19時) (レス) id: 522dbc585e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：来夢*ﾟ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/playlistra/
作成日時：2018年6月13日 20時
