ただ一言 ページ19
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「翔さん、俺…俺……っ」
くぐもった声が聞こえるのはたぶん、二宮さんが顔を翔さんの肩口に押し付けているから。
「俺……ほんとは、ずっと……」
声にならないのかもしれない。
そう思ったのは、二宮さんの声があまりにも泣きそうに聞こえたから。
二宮さんと出会ってから泣いてるとこなんて一度も見たことないけれど。
その泣き顔が想像できてしまうほど、二宮さんの声は震えていた。
「……カズ」
ビクリと、二宮さんの肩が跳ねる。
翔さんが呼び掛けた名前は、今まで聞いたどの「カズ」よりも柔らかくて、優しく聞こえた。
「会いたかったよ、俺は」
垂らしたままだった手を持ち上げて、翔さんがゆっくりと二宮さんの身体を引き離す。
至近距離で二宮さんの目を見つめて。
ふわりと、笑った。
「！」
二宮さんの瞳が大きく揺れた。
翔さんよりも少し狭い視界に、涙が浮かんだのが私にもわかった。
唇を噛んでうつむいて、翔さんの服を握りしめる。
「カズは？」
問いかける声はちょっとだけ弱々しかった。
カズに会いたいだけだと、そう言った翔さんの姿を思い出した。
至極単純で、どこか幼さすら感じる翔さんの動機。
私に声をかけた理由。
ただ、それだけだと、そう言った翔さんは。
もしかしたらただ一言、二宮さんに告げたかっただけなのかもしれない。
会いたかった、と。
ただ、それだけを。
「俺、も、会いたかった……ほんとはずっと会いたくて、でも、そんなこと許されないと思って、……っ…」
震える声で、二宮さんは声を絞り出す。
「……会ったらまた、翔さんを閉じ込めるんじゃないかって、怖くて……」
涙を息と一緒に飲み込んだ二宮さんは、大きく震えた息を吐き出した。
それから、ゆらゆらと首を振る。
「……違う。ほんとは、翔さんに嫌いだって言われたくなかったんだ。翔さんに嫌われたら生きていけないって、そう思って」
翔さんを見つめる茶色い目を見て、あぁ、捨てられた子犬みたいだなと思った私の印象は、間違っていなかったんだと思い至った。
翔さんの話をするときにだけ二宮さんが見せる表情。
翔さんを見つめる二宮さんはまさにその表情を浮かべていた。
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橘花(プロフ) - ４章おつかれさまです…！対峙シーン承知しました！機会を待ってますね♪甘いような甘くないような。王子様でもお姫様でもない2人だけが分かる世界、が素敵ですね。言葉は甘くないけど、温度が甘い二宮さんの言葉がたまりません。5章もたのしみにお邪魔します♪ (2019年11月12日 17時) (
レス) id: c96c7aeb8a (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - 橘花さん» あまり頻発するのもよくないんですが、このシーンばかりは流石に多くなりました。大切な位置付けですのでそう言っていただけてよかったです♪NさんMさんの対峙シーンは主人公不在場面のお話なので本編では予定していないのですごめんなさい(>_<)機会があればどこかで! (2019年11月1日 22時) (レス) id: a52d40e8ad (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - はっきりわかったようですね…！ずっとおっしゃっている魔法使い、お姫様、王子様、が一貫して出てきてくれるので、わかりやすくて助かります！二宮さんと松本さんの対峙場面も見れますかね。 (2019年11月1日 19時) (レス) id: c96c7aeb8a (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - 橘花さん» 一連のシーンはNさんの言い回しなんかも考えながら書いたので気に入っていただけてよかったです！おっしゃる通り、みんなにはヒロインも含まれております。少しずつお話は終わりへ向かう感じですが引き続きお付き合いいただければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2019年10月31日 18時) (レス) id: a52d40e8ad (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - Ｎさん！Ｎさん！！独白すてきでした…。｢水瀬を返せ｣も痺れましたが、その後の憑き物を落とす豹変ぶりが大好きなＮさんでした…！そして｢みんな歪んでる｣というつぶやき的なの答えというか。水瀬ちゃんもやっぱりお話のみんななんですよね。次はＳさんの気持ち…。 (2019年10月30日 21時) (レス) id: c96c7aeb8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年10月14日 19時
