甘く、沈む。《ars/k.n,s.s》 (ページ5)

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知り合いページ5

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するりと手が逃げて行って胸ポケットから取り出したスマホをにぎる。

開かれたスマホがぼうっと明るく光って二宮さんの横顔を浮き上がらせた。

二宮さんの指の爪がガラスを叩いてカチカチと音を鳴らす。

「知り合いの店が開いてるから、そこでいいね」

「はい」

最初っからほかの選択肢なんて用意してないくせに。

私の返事を聞くより前に二宮さんはスマホを耳に当てる。

「あー、相葉さん？今から二人で行くから」

相変わらず相手の話を聞かずに一方的に話してるのを聞いて二宮さんにばれないようにうつむいて笑みを浮かべる。

そんな二宮さんが知り合いだって言うんだからその人はすごく仲のいい友達に違いない。

「うるさいな、どうせ空いてんだろ……ほら見ろ、客になってやるんだから感謝しろよ」

電話口の向こうから騒がしい声が聞こえてくる。

それに向かって「うるせーよ」ともう一度言った二宮さんはやっぱり口元に笑顔を浮かべていた。

二宮さんは一人になりたがりだけど、ほんとはすごく寂しがり屋だから。

楽しげに笑ってるこの顔の方が会社で一人静かに煙草を吸っている顔より好きだなと思った。

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