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夏もどき ページ17
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まだ夏の色を塗り切れていない太陽は広がった雲の切れ間から白い陽光をコンクリートジャングルに降り注がせる。
ビルの窓に反射した光は目に見えないけど櫻井さんの額に浮かんだ汗をきらりと輝かせた。
ふっくらした唇が「あっついなぁ」って言葉を空気に泳がしてまだ夏になりきれない中途半端な空気はそれを溶かしきれずにどこかへ運んでいく。
「時間合わせてもらってすみません。昼間暑いから、夜の方がよかったですよね」
「いえそんな。季節外れの暑さですからしょうがないですよ」
毎年テレビは季節外れの暑さだなんてうそぶいているけど。
私は同じ言葉で櫻井さんに笑いかけた。
天気予報のお姉さんはこんな気持ちで笑ってるのかななんて無駄な想像。
「夜の外出許してもらえなくて、アハハ、すみません」
「気にしないで大丈夫ですよ」
大人なのに子供みたいなことを言う櫻井さんは苦笑いを浮かべてる。
でも昼間から会えれば夜から会うよりも長く一緒にいられるかもしれないからこれはこれでいい。
中途半端な夏もどきは風が少し吹くだけで涼しくて櫻井さんが羽織っているチェックのシャツが風に膨らんでちらっと中の白い生地をのぞかせた。
ほんものの夏だったら上のシャツはなかったかもしれないと思うとちょっと残念だった。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年7月19日 17時
