視線 ページ12
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「チャットアプリとか、ガラケーだとやってないです…よね？」
「すみません。全部メールなんです」
「ですよね。大丈夫です、私のアドレスお伝えするのでメモっていただけますか？」
「はい」
私がアドレスを伝えると櫻井さんは真剣な目で赤い光沢のあるガラケーに目を落とす。
テンキーを櫻井さんの長い指が押すたびにカチカチと懐かしい音がする。
昔はすごい速さで文字打ちできてたけどスマホになれた今はもう無理だろうなぁ。
「はい、ありがとうございます。ここにメールお送りしますね」
「お願いします」
「ふふ、久しぶりです、誰かとアドレス交換したの」
そう言って櫻井さんが笑みをこぼすから、あぁこんな顔もするんだって思う。
均等のとれた顔立ちが少し緩んでちょっと可愛らしい。
と、そこにコンコンコンとノックの音が響いて遠慮なく扉が開いた。
「失礼します……あぁ、いたいた、遅くなってごめんね翔さん」
「あ、潤、待ってたよ」
扉の向こうからまた新たなイケメンが現れた。
二宮さんとも櫻井さんとも違って堀が深めのイケメン。
え、なに、この場所イケメンの磁場でも狂ってんの？
それとも美形の知り合いは美形じゃないと成立しないんだろうか。
そういえば相葉さんもイケメンだったなって思っていたら潤と呼ばれたイケメンさんが櫻井さんのものらしい荷物を持ち上げた。
「……それじゃあ、お先に失礼します。帰ろう、翔さん」
「うん。じゃあ、失礼します。水瀬さんお大事に」
「はい、ありがとうございました！」
余計なことを一言も告げずに櫻井さんの腕をとったイケメンさんはふと視線を止めた。
一瞬だったけど、目力のある切れ長の目がピクリと細められて、ふいと逸れて部屋を出ていく。
その視線を受けた二宮さんは、珍しく何とも言えない顔で視線を床に落としていた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年7月19日 17時
