あますぎちゅうい【utit】【短編集】

sm ページ38

.


「もおー……」


コントローラーを膝の上に置いて唸っているのはゲームが苦手な彼女、A。「今日はマリカー特訓する！」と言い張って昼間からずっとこんな感じだ。俺は少し離れたダイニングの方からその光景を見ている。

苦戦してるところが可愛くて見てて面白い。こんなこと言ったらきっと怒られるんだろうな。



横顔しか見えないけれどあまり俺の前では見せない真剣な顔。肩辺りまである髪から少しだけ見える高い鼻と真剣な目と唇。横顔もこんなに整ってる。

「やっぱり俺もやろーか〜？」

もうそろそろ飽きてきただろう。さっきは断られたけれど俺もAの練習に付き合って楽しませてあげたい。
と、思ったのだが……

「志麻くんはだめ！」

さっきと全く同じセリフ。

「なんで俺ダメなん！？」

「私一人で頑張るのー！」

Aは俺側の髪を耳にかけた。
さっきよりも横顔が綺麗に見える。
そしてコントローラーを手に取った。



いじわるしてみよ


「マリカー始めて何分経ったっけ〜？」

「んーーっ、練習いっぱいしてるの！何事にも練習は大切！」


Aは俺の方を向いて怒った。
こんなのいつものことなのに胸が高鳴った。



え、まって…可愛い



いつも可愛いけどなんだかさっきのは特に可愛かった。何が彼女をそんなに可愛くさせたのかと考える。


あぁ…そっか髪だ。
こんなに雰囲気が変わるもんなんだ。



「ふぅん……」



もっかいこっち向いてくれんかな。
ゲームばっかりじゃなくて、俺にも。


.

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す