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【 ▽ Side . 清水 】
「潔子さん今日も美しいッス！」
ーー”美しい”、
褒められるのは嬉しいもので
恥ずかしくて碌に返事もしていないのに
飽きずに何度も話しかけてくれるのは
素直に喜ばしいことだった
けれど、賞賛の声が聞こえる度に
少々の照れ臭さを感じる中、
その単語に”あの子”の姿が頭に浮かぶ。
ーー気高く、純真で、美しい。
控え目のようでいて凛としている姿に
この胸は確かに弾んだのだ
珍しく部活がない放課後のこと。
早く家路につくのを躊躇い、
好きな読書を堪能しようと決めて
昇降口から図書室へと足を運ぶ。
備え付けられた棚に
所狭しと並んでいる本の数々を一瞥し、
他よりも陽が当たる席を選んで
そこに荷物である通学鞄を置いた
( ……誰もいなかった、のに、 )
それは出入り口から図書室の中を入った時
辺りを見渡して確認したことなのに
本棚の間に目を向けると
ｻﾗﾘと繭の糸のような艶やかしい髪が揺れた。
人の一人も居なかったはずだ。
勉強をする生真面目な生徒や
読書を楽しむ者も、
ましてや運営を任されている図書委員さえ。
それなのに、この目は確かに捉えた。
「……待って！」
ハッとして両手で口を塞ぐ。
無意識に出していた声に
自分自身、驚きを隠せないでいると
本を閉じる小さな音が聞こえた
そして動揺をしたまま視線を前に戻し、
もう一度、音がした先程の場所に目線を遣る。
消えてしまいそうだ。
目を離したら、直ぐにでも
姿を見れなくなってしまうんじゃないかと、
それくらい儚さを感じたのは初めてで
話しかけることにさえ躊躇うほど。
それほどまで彼女は透明の色を宿していた。
「………貴女の、名前は？」
印象に衝撃を受けたまま
静かに、慎重に、問いた
目の前に姿を現してくれたのは
同じ制服に身を包んだ髪の長い女の子。
今、目の前にいる女子生徒が
妖精や神秘的なものの類なのではと
柄にもなく思ってしまうのは
致し方ないことだろう
彼女が身に付けている制服だけが
唯一、幻ではないと否定していた。
「ーー…名前、」
一瞬で静まり返る。
最初から辺りは静かであるはずなのに
彼女の声が空気を揺らした刹那、
全ての音が其れに耳を傾けたように感じた
再び、凛とした心地良い音が鳴る
「ーー名前なんて、無いです」
＿＿＿＿＿＿嗚呼、彼女はこんなにも人間らしい色をしているじゃないか。
終わり
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赤 - 凄い心に響くというか落ち着くというかなんか凄いです！続きが気になるので更新していただけないでしょうか？ (2022年1月6日 0時) (
レス) @page20 id: 51c9a307dd (このIDを非表示/違反報告)
優琴(ﾕｷ)(プロフ) - え、え、語彙力やばくないですか？？？なんかすごく最後の言葉がいい感じというか、あれなんだこの神作 (2021年11月30日 8時) (レス) @page20 id: 2ddfb5e61c (このIDを非表示/違反報告)
無気力しか勝たん - ゑ？神じゃん(語彙力どっかに落っことした)(あ、語彙力元々なかったや☆) (2021年9月22日 0時) (レス) @page20 id: 5861121e2b (このIDを非表示/違反報告)
りおん。(プロフ) - 最後、その一言がすとんと入ってきました。 (2021年2月22日 19時) (レス) id: 5ba492e76b (このIDを非表示/違反報告)
しゅしゅ - 心に、響きますね。(語彙力どこいった) (2019年8月16日 10時) (レス) id: dd13cd4910 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：腐りかけのカフェオレ | 作成日時：2015年9月7日 14時
