53話 ページ3
彼らの必死な形相を傍目に松代は「Aに彼氏?」と眉間に皺を寄せる。
「聞いたことないわねぇ。居ないんじゃないの?」
「ほんとに?中学の時は?」
「母さんはそんな話聞いたことないわ」
松代の言葉に六つ子はその場で踞ったかと思えば「いやったあああああああっ!!!!」と跳び跳ね、喜びを全身で現すように踊り始めた。
『勝訴』と書かれた紙を掲げたり万歳三唱を繰り返すものもいる。
俺達の妹に彼氏なんていない!これからだって必要ないよね!だってお兄ちゃん達がいるからさ!、と誰が言ったか分からないが狂気がちらつく言葉が繰り出される中、松代が口を開いた。
「でもあの子、モテるのよねぇ。
月に何回か男の子から家の電話にまで連絡来てたり、中学の卒業式の後なんかは自宅近くに呼び出されていたわよ。
彼氏が出来るのも時間の問題じゃないかしら」
「え」
「……ちょっと待って、母さん。それ本当?」
「嘘じゃないわよ。ああ、そうそう。家の隣の喫茶店で働いてる若い男の子居るじゃない?
その男の子に『Aさんと付き合いたいので許可をください』なんて言われたわ。
まあ、そういうのは本人次第だから母さんは本人に聞いてくださいって言ったけど…」
松代の言葉に六つ子はゆらりとその場に立ち上がる。
全員重苦しい雰囲気を背負っており、松代からは表情を伺うことは出来ない。
「母さん、俺達ちょっと出かけてくるから。夕飯は後で食べるから置いといて」
「あらそう。今日はAと食べないの?」
「Aと一緒に食べられる位の時間には帰る」
松代が出ていくと押し入れから服を取り出し颯爽と着がえ始める。
あっという間に警察官と警察犬の服装に変わった6人は殺気を纏いながら互いの視線を交わすと揃って頷いた。
「あらA。帰ったの」
松代が振り返ると制服姿のAが「ただいま」と返す。
いつもなら着がえる為にすぐに部屋に向かうAだったが今日は少し違った。
「ねえお母さん。隣のカフェって工事してるの?」
「ええ?そうなの?」
「さっきお店の前を通ったらまだこの時間なのに閉まってて、お店の奥の方から凄い音がしてたから」
「そういえばさっきから物音がしてたわね…。水周りでも工事してるのかしら」
「かなぁ…」
話もそこそこに、Aは着がえる為に部屋へ向かう。
自室に入る頃には隣のカフェの事は忘れ、今日の夕飯の事について考えていたのだった。
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ゆらっち - いつまでも待ってます「白目」 (2022年3月29日 1時) (レス) id: ab3ad11547 (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げ - めっちゃ気になる所で! (2020年8月10日 23時) (レス) id: f7a5cc7b87 (このIDを非表示/違反報告)
かね - 早く更新してくれると嬉しいです! 続きが気になります(>,<) (2020年6月1日 12時) (レス) id: 2bc6218c5e (このIDを非表示/違反報告)
苺 - ぞ、続編を…続編をーーーー (2020年4月6日 16時) (レス) id: 62e9c06d5c (このIDを非表示/違反報告)
雪 - 続編ーーーーーーー!!!!!!!!お願いします!!!!なんでもするからーーーー!!!!! (2019年11月30日 10時) (レス) id: 97b58e1a5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖 | 作成日時:2016年2月4日 3時