#7.75 ページ15
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移動し、辺りを見渡す。
そこで目にしたのは、蛙吹へ手を伸ばそうとする敵の姿だった。その行為が危険なものであると察知し、相手を視界に入れながら呟く。
「封」
全てが、スローモーションのようだった。
荒言の脳内は、どこか冷静であった。
「＿本っ当、かっこいいぜ。
荒言クン」
ああ、コンテニューだと首を掻き毟る手だらけの敵。苛ついた表情で荒言に顔を向けると一言。
「＿化け物め。
お前らのような強個性をひけらかして相手を暴力で捩じ伏せようとする奴らが讃えられるなんて...！！
だからヒーローは嫌いなんだ！！！オールマイトも...全てのヒーローも...嫌いだ...嫌い...嫌いだ！！！」
「＿だからだ」
「...は？」
「だから俺はヒーローになるんだ。
君らみたいな迷子の子を救ける為に。」
荒言は思わず抱き締めていた。
死柄木が昔の自分と重なって、酷く安心した自分がいた。
今はただ迷子なだけ。自分の価値も、命の重みも、“個性”という存在を前にして、わけが分からなくなってしまって、麻痺してしまって。
自分でも処理できない程の漠然とした恐怖に、不安に押し潰されている。自分の見るべき道が、進むべき道がどちらか分からなくなってしまった。
(俺が救ける)
たったそれだけだった。
救けたい、たったそれだけ。
自分と似ていたのも理由としてあったかもしれない。でも何より、この可哀想な迷子の子を救けなきゃって、身体が勝手に動いていた。
「大丈夫。大丈夫だよ、大丈夫、」
「さわるなｯ！！！」
「怖いよ、怖い、
人に理解されない恐怖は。
壊されそうな
でも大丈夫。大丈夫、俺が救ける。」
「あ、ぁあ゛、あ」
「死柄木弔ｯ！！！！！！
目を覚ましてください！！貴方の望むべきことはそれですか！？貴方のすべきことはそれですか！？違うでしょう！！！！」
「...っ、離れろｯ！！！！！
＿黒霧、帰るぞ...早く連れてけ！」
仲間であろうか、靄に包まれた1人の敵が死柄木に叫ぶ。死柄木は荒言を突き飛ばし、我に返るように再びあの瞳に憎悪を呼び戻した。
でもその瞳は。
確実に、
(救けて、って...叫んでた。)
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作者名：らーめん | 作成日時：2020年1月19日 15時
