愛し君へ【黒】 (ページ7)

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7 こみあげてくる想い(Ren) ページ7

相乗りしていた彼女をホテルのエントランスで下ろしてから、俺はタクシーの背もたれに凭れながら一つ息を吐いた。

「何やってんだろ、俺」

「お兄さん、何か言った?」

「あぁ、いえ…。すみません、バイト先まで急いでいて…少しだけ、飛ばしてもらっても大丈夫ですか」

寝坊をして、バイトの時間に遅れそうになったから、普段乗ることのないタクシーに乗った。

スマホのロック画面の時刻は出勤時間をとっくに過ぎていた。

彼女は間に合ったかな。

友だちの結婚式だったのかな。

綺麗な格好をしてたから、誰かと会う約束だよな。

…彼氏と会う約束？

そうだったら、いやだ。

でも、あんなに美人で良識のありそうな人に彼氏がいないはずがない。

……え？てか俺、連絡先なんて聞いてよかったのかな。

年はいくつくらいなんだろう。

ニ十二、三から七、八まで、そのどれと言っても通りそうな可憐な容姿で、柔らかい、優しい声の女性だった。

俺よりも年上なことは決まってるだろうけど。

小さな耳にプラチナのピアスをしていて。

まるで、今日の雨のしずくがのっているみたいだった。

見れば見るほどに、きれいな横顔だった。

それから、少し、愛いを帯びた、寂しそうな雰囲気。

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