4 ずっと、この気持ちの中に(Ren) ページ4
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彼女は眠ってしまっていたことに瞠目して、恥ずかしそうにした。
それから、
「どうもすみませんでした」
謝らなくてはならないのは俺の方なのに、そう言ってしまうところがきっと、彼女のいいところなんだろう。
ぺこりと頭を下げて、それから財布を出して料金を払おうとした。
俺はそれを無視して、彼女の財布の手を俺の手でやんわりと下げた。
「あの、お金…」
俺は少し笑いながら首を横に振って大丈夫だと伝える。
「申し訳ないです。それに…すみません、私が先におろして頂いて」
彼女は申し訳なさそうにして、お財布を握りしめたまま、佇んでいる。
あぁ、可愛いなと思った。
真面目で、礼儀正しくて、人を想う優しい心を持っていて、
男慣れしてないっていうか…
こうやって、視線を合わせているだけで、
まるで、頭のてっぺんから蜂蜜の瓶の中へ溶け込んでいくみたいだ。
甘くて、柔らかくて、とろとろに溶けていて─
なんていうのかな…たまらない。
全部、俺のものになって欲しいと思った。
「あの… 」
ずっと、この気持ちの中にいたい。
「お金はいいんで。今度、ご飯行きませんか」
軽く聞こえそうなその言葉は、俺がいま出せる最大限の勇気であることを君はきっと知らない。
「えっ？」
それから、戸惑う彼女を横目に携帯電話を伝える。
俺に押されながらも、御礼の為にという気持ちからかな？
慌てながらもスマホをタップして、
俺に言われるがまま、登録してくれてる、ようだ。その姿を目尻を下げながら俺が見つめていたのを彼女は知らない。
「じゃあ、また」
低い声で俺はそう言うと、ほとんど放心状態の彼女を置いて、俺はタクシーを出してもらった。
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これが、Aさんとの出会い。
動き出した運命だったんだと、俺は思う。
君のことを知りたい。
君の無邪気な笑顔が見てみたい。
君の涙を受け止めて、拭いたい。
君のそばにいたい。
君を愛したい。
君に愛されたい。
そして、俺のすべてをかけて君を守りたいと。
全てはここから始まったんだ。
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作者名：riko | 作成日時：2023年6月5日 15時
