2 彼と出会う ページ2
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ヘアアレンジを終えて、お店の外に出る。
ゴールドの華奢な持ち手の傘を広げると、淡いブルーの小花柄が目に映ってきた。
手首の小さな腕時計を見ると約束の時間まであと10分ほどしかなかった。
「えっ、遅れちゃう」
どこで時間が押したのか、考える暇もない。
傘をさしたまま、表通りに出る。
雨が降っているから走るタクシーはどれも乗車中を示すランプばかり。
傘の持ち手を両手でぎゅっと握る。
過ぎ去るタクシーを何台も見送っていると、やっと一台の空車が私の目の前で立ち止まってドアが開いた。
よかったと、心の中でつぶやいて、さしていた傘を畳もうとしていたら、大きな身体の影が、私のすぐそばで、素早くタクシーの中に入っていった。
「えっ！」
タクシーのドアがバタンと閉まって、そのまま発進してしまう。
閉じかけた傘を持ったまま、途方に暮れる。
怒るというよりも、あまりの俊敏さに目を瞬いてしまった。
すると、数メートル先でブレーキランプがつき、タクシーが急停車した。バックでゆっくりと戻り始めて、私が立っている所で止まった。
後部座席のドアが開いた。
中に座っていたのは長身の男の人。
「すみません、俺、全然気がつかなくて…」
そこで視線を重ねると、彼の目が少し大きく開いて。
それからすぐに、雨に打たれたままの私に眉を寄せた。
「とりあえず乗って！」
男性らしい声の上に、彼の声には有無を言わせない力強さがあった。
小さく頷きながら隣の席に座る。
私よりも年下にみえる。
長身痩躯なモデルのような身体にテクノカットの髪型。鼻梁も高くて、横顔も端正なつくりだった。
淡い水色のシャツの浅く開いたVラインから覗いた喉仏が見えて、ふと目を逸らした。
白いスニーカー
小さな顔
遠くからでも見える、長い睫毛
大きすぎない涼しげで、だけど優しそうな瞳
……素敵な、人
雰囲気を纏っていて
ただ、座っているだけなのに絵になる。
「待っていたの気づかなくて、すみません」
思っていたよりも低い声。
「いえ……その…戻ってきてくれてありがとう」
私の言葉に彼は目を丸めると、
プッ、と目を細めて笑った。
伏せた彼の睫毛が
優しく瞬きをするのを私は
ただ見つめていた。
さっきまではクールな顔立ちだったのに、彼は破顔すると印象がガラッと変わって…こんなにも可愛くなるんだ。
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作者名：riko | 作成日時：2023年6月5日 15時
