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俺が物心つく前から、気付けばいつも俺と侑との間にAが居た。
初めて俺とAが喧嘩した時、侑は何にも言わずに俺とAの間に入って3人で手を繋いでいた。侑の隣でグズグズ泣いてるAに、侑は大丈夫、大丈夫、と繰り返し呟いていたのを記憶している。他にも何か言っていたのかも知れないが、俺はそれで落ち着きを取り戻したのだ。
女の子泣かしたらあかん。父親はそう言い、母親は俺を抱き締めて明日ゴメンね言おうな。治は言えるよな、と頭を撫でた。
何で喧嘩したんかは覚えとらん。きっと些細なことや。
けど、Aの涙は俺を暗闇に突き落とした。涙目のAには今も恐怖を覚える。
壊れんといて。俺もAも。大袈裟やなしに、そう思う。
*
なんの事ない日常に大きな波紋を落としたのは、俺の片割れ。
「俺、Aが好きや」
中学の時、近くの中学で練習試合をし、家へ帰る途中のコンビニで買ったアイスを食いながらの道中、侑が言った。
「何でそれを俺に言うん？」
「治には言っといた方がいいかと思って」
「………」
きっと侑は俺の気持ちに気付いてたんやろな。当たり前か、侑やもんな。俺の双子の兄弟やし。
でもそれはポロリと溢れた本音じゃなく、明らかな意図を持って紡がれた釘を指す意味合いの言葉だったと俺には分かった。
(……A、好きやで。好きや)
何でか脳裏にAに好きやと伝える俺が浮かんだ。それは想像で渇望でもあるのだが酷く不鮮明に歪んでいて気分が悪なった。
「あ、向日葵や」
そういや……
「Aは好きやったな、向日葵」
俺が黙ったままその花を見つめていると、侑は静かに俺に問いかけた。
「向日葵の花言葉知っとるか？」
侑は笑顔で、しかし思わず背中に冷や汗をかくような鋭く強い瞳で俺を見て言葉を紡いだ。
「向日葵の花言葉はな、」
*
アナタダケヲミツメテイル
*
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作者名：ポロリ | 作成日時：2019年10月30日 11時
