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「お邪魔します!今晩はおばさん!ご無沙汰してます、今日は突然すみません」
「いらっしゃいAちゃん、いやぁー、別嬪さんになってぇ!」
「うははは!ありがとうございます!嬉しい!」
「うははは!って何やねん全然別嬪ちゃうやんけ」
「侑は黙っとき。嫌やわぁ、こんなんでホンマに。さぁ上がって上がって」
家へ帰ると、オカンが玄関まで出迎えに来た。いつもは来んのに。
Aは玄関で靴を脱ぎ、それをしゃがみこんで綺麗に揃えた。なんのことないそんな動作に目を奪われる。
「おっくん、ボゥっとしとらへん?大丈夫?」
「なんや治、熱でもあるんか?」
「こいつポンコツやねん」
「もうあっくん!」
「さぁさ、手ぇ洗って冷めんうちにご飯どうぞ」
オカンが洗面所の電気を付け、真っ先に侑が飛び込んだ。
*
「いただきます!ありがとうおばさん!」
「はいどうぞ。たんと食べてや」
たんと食べてき!2人のご飯沢山作ってるから女の子1人くらい増えても全然大丈夫や!とオカンが言い、Aは最初遠慮しとったが、食卓に並んだ飯を見てマンガみたいに腹の虫を鳴かして俺は笑った。
「おばさんのご飯久し振り!美味しそう!いただきます!」
俺の隣に侑が座り、俺の真向かいにAが座った。
「なぁ、マネやらんの?」
侑が問うとAは笑いながら
「私は平穏を望んでるんですー。無理ですー」
「男バレが不穏みたいな言い方すんなや」
「もうええねん。バレーにはもう何も望まない」
「……ほうか」
それきり侑は黙り、箸が食器に当たる音が響いた。
俺が2杯目の飯を平らげたとき、Aは箸を置いて
「……バレーか。続けとったら今も……」
と、寂しそうに呟き瞳を伏せた。
「そんな顔すんな。俺らが一緒にやったるよ、なぁサム」
「おん……」
視線を上げ、Aの顔を見やれば寂しそうに笑っていた。
「そんな顔すんな」
珍しく真面目な顔して侑が言って、俺が掛けようとしていた言葉は音にならずに、俺はそれを飯と一緒に噛み砕いて飲み込んだ。
(A。好きやで)
俺はそん時、そう強く思い、でもその時の俺自身の意思により腹の底へ押し込まれ、しかし今現在も俺の錘になって、それは消化出来んままで燻っている。
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作者名:ポロリ | 作成日時:2019年10月30日 11時