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「今日も1日お疲れさんやでー。見てみぃ、お月さんが真ん丸や」

見下ろすと、わずかに開けられた窓からの風を受けて柔らかな髪を揺らす片割れ。

"侑くんの髪の毛、硬いと思ってたわ!意外と柔らかいんやね!"

そう言えば、馴れ馴れしく侑の髪に触れた名も知らん女を、侑は鬼の形相で睨み付けて涙目にさせとった。
そんな侑の髪の毛をワシャワシャに掻き回せる女は、きっと今んとこオカンとAだけやろな。
教室の戸口に身体を預けて立ってボンヤリ見つめる先、此方に駆け寄ってくる侑の髪の毛はフワフワと跳ねとった。

「お前、いつか刺されるんちゃう?」

「はぁ?!なんでやねん。怖いこと言うなや」

「何が怖いことあんねん。胸に手ぇ当てて考えてみぃ、心当たり大有りやろ。自業自得や」

「あーりーまーせーんー」

中学から目立ってたらしい俺らは、高校に上がってからもまあまあ目立つ存在ではあった。クラスには必ず数名いる、所謂スクールカースト上位の女が特に部活前の時間帯に囲んでくるのを、侑はかなり嫌ってた。

「うっとおしいわ。散れや」

低い声で言う侑を中心にポッカリ距離が開いた。と思ったそのとき、堪えきれない、というような押し殺した笑い声が聞こえてきて、俺はギョッとしてそちらを見、侑もこれでもかと目を血走らせて睨み付けた。しかしその直後、満面の笑みでそちらに駆け寄った。

「A!!」

「名,前で呼ぶなや!状況考えろ!ほんま信ッッッじられへん!」

「俺は信じとったでぇー!!」

侑は、クリンクリンの茶髪でバッサバサのまつ毛の女を押し退けると、Aを引き寄せて抱き締めた。
侑はAの首もとに鼻先を寄せ、それを受けたAはくすぐったい!と、色気も困惑も緊張も感じさせずに大口開けてゲラゲラ笑いこけてた。
その後、はぁー、グッバイ私の平穏な高校生活…なんて机に突っ伏していたが、Aも満更でもなかったんやろな。きっと。

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作者名:ポロリ | 作成日時:2019年10月30日 11時

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