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俺がAの元へ戻ると、男子生徒が1人Aの背中をさすっていた。
「A?」
俺が、その男子生徒を見ながらしかしAに声をかけると、やっと俺に気づいたのか'おっくん……'とか細い声で言い、俺を見上げた。その隣でその男子生徒も俺を見て
「お前、治?」
と、何でか俺を睨み付けた。
「そうやけど」
俺が答えるとソイツは黙ってAの頭をポンポンと軽く撫で付けた。
俺はそれを見て頭に血が上ったのだがそれを押さえ付け、ソイツに負けじと睨み付けてやった。
「侑は何しとん?自分の女泣かして何しとん?」
口調は静かだったがその語気は強かった。
「Aの前でヤメロや。侑が泣かしとるわけちゃう」
言いながらAの腕を引き上げ、自身の胸に抱き寄せた。するとその直後、俺の腕からAをかっさらっていく強い力。
「あ……侑」
Aの呟きに俺もソイツも顔を向けると、強張った表情の侑がAを抱き締めており、侑の後ろにすました顔で角名が立っていた。
「びしょ濡れやんか……ごめんな、ごめんな」
侑はAの髪に鼻先を埋めてその細い背中をさすった。
いつか短ーくなったAの髪の毛も、今はちっこくてまぁるい頭の後ろでひとつに括られていた。
「Aさん、違ったらごめん。女バスの…?かな?」
黙ったままだった角名がポツリと言ったとき、Aが侑の腕の中で、ピクリと反応したのが見えた。
「すまん、角名。今はそっとしといてやってくれへん?」
俺は角名の背中に手をやって促しながら、侑とAに背を向けて教室へ戻った。
俺が席へ着くと、角名が俺の前の席へ腰かけた。
「体育館の手洗い場でさ、女バスのヤツらがAさんのこと喋ってたの聞いたんだよね。まさかこんなことになるなんて思ってなかったから、特に誰にも言ってなかったんだ」
角名が瞳を伏せて言う。
「気にすんなて。角名のせいでも侑のせいでもAのせいでもない。誰せいでもない。ソイツらが悪いんや。侑も角名を責めたりせんよ」
そう言った俺の顔を見た角名が微笑んだ、と思ったその時、俺の後ろから
「それ、誰やった?」
低い声で言いながら侑が現れた。
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作者名:ポロリ | 作成日時:2019年10月30日 11時