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「1年2組、AAです!バレーは中学までしてましたがマネージャー業は初めてですので、至らないこともあるかと思いますが精一杯頑張らせて頂きます。宜しくお願いします!」
Aが稲荷崎高校男子バレー部のマネージャーになったのは、高1の夏前だった。
初めは過去の経験からか、部員目当てのキャーキャー言うだけで仕事出来ん女やと思ってたらしい先輩達だったが、Aの仕事ぶりを見て次第にそんな偏見も無くなっていった。
「Aー!ボール出しして!」
「待って!ビブス洗っちゃう!」
ボール出しボール拾いはお手の物、データの収集と分析も正確で的確。たまにおっちょこちょいなとこもあるけど、それはご愛嬌。と部員からの評判もなかなか良かった。
個人にあったテーピングの仕方など、経験者ゆえの知識と仕事ぶりも伺えてAは男バレマネージャーとしての存在意義を自身で示していった。
しかし、それでもやはり男らの中で認められた1人の女、というのが高校の女達には容易に許せる事態ではなかったらしい。
特に侑は目立ったし侑に近づきたい女も多かった。その侑にボール出しして、などと声を掛けられてその近くにいるとなれば、女たちの目に不快な邪魔者として映るのも当然といえば当然だった。
ある日、Aの髪が短ーくなっていた。
それまでは背中の中程までのロングで、家に遊びに行けばその長い髪の毛をブラシで丁寧にとかしていたり、休日には綺麗に結い上げていたり、Aもそれを気に入って手入れもよくしていた様だったのに。
部活の時は、三つ編みにした髪の毛を頭のてっぺんでまとめていて、細くて白いうなじに垂れてる後れ毛を見るのが、俺の密かな癒しでもあった。
「何で切ったん?勿体ないなぁ」
「え、失恋したん?(笑)」
皆が口々に好き勝手言ってんのを押し退けて、侑はこっわい顔をしていた。
「なぁそれ、誰かになんか言われたん?それともヤられたん?」
「え何言うとん?何もないわ。邪魔やから切ったんや」
侑の絶対零度の視線も無かったかのように、Aはあっけからんと言い放った。
「…ほうか」
侑はそれを聞いても強張った表情を変えることなく、しかし納得したかのような口振りで俯いた。
皆が遠巻きにそれを見る中、Aは静かに侑を見つめていた。
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作者名:ポロリ | 作成日時:2019年10月30日 11時