DeaR 【七海健人】 (ページ9)

今日:8 hit、昨日:16 hit、合計:19,140 hit

Neutral* ページ9

.
.

＿＿＿side.Satoru*

.

「あの神社を護ることに意味なんて既にないんだよ」

かつては、あの神社周辺は大きな村で
たくさん人が住んでいたらしい。

だからこそ、護る意味はあった。

「もうあの神社周辺は廃れて、ただの森だろ？」

「ええ、」

「そういうことだよ」

彼女が命を賭してまで降ろしている帳も、
呪力も、命のエネルギーさえも。

全ては先代である母からかけられた呪い。

「本来護る必要のない場所を、降ろす必要のない帳を
命を削ってまで、無自覚でおこなってるのは
代々、身内からそういった言霊を…呪いをかけられているから」

無駄なことに、無駄な力を使って、無駄な死人を出すだなんて
あまりにも馬鹿げてる。

これは僕の勝手な想像だけど、
『命を削ろうともここを悪いものから護りなさい』とか。

そんなんかなぁ。

親から受けた死に際の言葉が、呪いになって、
彼女を殺そうとしてるんだ。

「それは…解けるのですか」

「解けないだろうね」

「っ…」

一度受けてしまった呪いを、
しかもかけた本人が死んでるなら尚更。

解くなんて不可能だ。

「……七海はさぁ」

「何ですか」

「あの子のことどう思ってんの？」

「？……何ですか、藪から棒に」

「……いいから、………もう時間がないんだ」

七海には言ってない、言えなかった。

彼女のお母さんも、お祖母さんも
30になる前に亡くなっている。

もう、本当に時間がないんだよ。

変えられない運命だったとしても、

悪足掻きかくらいさせてくれよ。