DeaR 【七海健人】 (ページ16)

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１* ページ16

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＿＿＿＿＿＿side.Kento*

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彼女の涙を見たことはなかった。

いつだって、底抜けに明るくて
屈託のない笑顔で。

でも、現に濡れた袖が全てを物語っている。

( この人は1人で苦しんでいるのか＿＿＿＿ )

彼女への想いを認めて、
伝えることを決意したのはこの時だった。

守りたいと思った。

他の誰でもない、私自身が
彼女を守りたい、隣にいたいと…そう思った。

「……1人で苦しまないで下さい」

「！…そんなことないよ」

「いつだって貴方は1人で抱え込む」

叶うのならば、この手で抱き締めたいと思ったから。

「……隠しても七海にはバレてそうだなぁ」

「隠さないで頂きたいんですけどね」

「ありがとね、七海」

貴方が笑う時は、いつだって苦しい時だろう。

「………送りますよ」

「近いから大丈夫だよ」

「いいから」

「ありがと」

いつか、五条さんに問われたのを思い出す。

『七海はさぁ』

『あの子のこと、どう思ってんの？』

あの時、私は何と答えた？

『何ですか？…藪から棒に…』

『いいから…時間がないんだ…』

そうだ、答えてない。

そんな私に五条さんは珍しく焦った様子で
急かしてきたのを思い出す。

なんとなく、理解できた。

もう＂未来(さき)＂が長くないことも。

貴方が、この手をすり抜けていってしまうことも。

私を置いて逝ってしまうことも。