ウーロン茶 ページ2
「Aさん何飲んでるんですか?」
「ウーロン茶」
「ウーロン茶?」
「今日車なの」
「そっか・・」
彼は美味しそうにグラスのビールを飲み干した。
「あ、コレ」
彼はカウンターの隅に置いてあった本を手に取った。
「ごめんなさい・・智久くんの本なのに・・勝手に読んじゃった」
「いえ、いいんです。こんなの好きですか?」
「好き好き。大好きなの」
「そうなんですか?」
「だって私、理系なの」
「へ〜リケジョなんだ」
「リケジョ?」
「今は理系の女性をそう呼ぶんですよ」
「ふ〜ん。そうなんだ」
「よかったらそれお貸ししますよ」
「ほんとに?嬉しい。じゃあお言葉に甘えて」
私はトモくんと並んでスツールに座った。
ワカコさんの検査結果について話をした。
「少し気になる数値がでているものもあるので
おいおいもう少し詳しく検査してみましょうって」
「ありがとうございます」
「お礼なんて言わないで」
「いつも僕の代わりにばあちゃんの事いろいろ任せちゃって・・・」
「ぜんぜんいいの。ホントに。毎日楽しくって仕方ないんだもん」
「ばあちゃんも、AちゃんAちゃんって。
いつも報告してくれます。だから俺結構Aさんの事いろいろ知ってますよ」
トモくんはビールを飲みながら笑った。
「そうなの!?」
「あんなこととか、こんなこととか」
トモくんの表情がいたずらっぽくなった。
「なんか恥ずかしい・・」
「Aさん赤くなってますよ」
「赤くなんて・・・これのせいじゃない?」
私は手元のグラスを指差した。
「え〜だってそれウーロン茶なんでしょ?」
1ヶ月の間に
私はトモくんとこんなふうに普通の会話ができるようになっていた。
しばらくすると奏ちゃんも戻り、ボチボチ常連さんも顔を見せ始めていた。
そろそろ11時になろうとしていた。
「私・・そろそろ帰るわね」
「Aちゃん今日はありがと。助かったわ〜」
奏がおつまみをセットしながら言った。
「あ、じゃあ俺もそろそろ」
トモくんも一緒に席を立った。
「じゃあね」
「ありがとうございました〜。いってらっしゃ〜い」
奏のお店から帰るときの挨拶は「いってらっしゃい」
トモくんは慣れたもので
「いってきま〜す」と奏に投げチュウなんかしてる。
「一緒に乗っていく?」
私は彼に聞いてみた。
「あ、俺、ちょっとこれから寄るところあって・・」
「そっか・・・」
そんな会話をしながら階段を上がった。
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作者名:Luna | 作成日時:2014年2月23日 11時