ポケットの中のコイン ページ5
目が覚めた時、少しだけまぶたが腫れていた。
泣きすぎたかも・・・
昨夜の余韻を引きずりながらベッドを抜け出した。
あとでHERMESへ行って夫の母から頼まれたものを取ってこなければならない。
クリスマス前には住んでいた家を引き払いマンハッタンのホテルに移っていたのでHERMESもそう遠くない位置にある。
ゆっくりシャワーを浴びて支度を整えた。
私はコートの上からストールを巻きゆうべプレゼントしてもらった新しい赤いグローブを
はめて外に出た。
コートのポケットでコインがチャリンと音を立てた。
昨日フェリーに乗るときに硬貨でお釣りをもらったんだった。
そう思いながら交差点で信号待ちをしていたとき・・
「やべぇ」
日本語が耳に飛び込んできた。
ふと振り返ると若い男性が落としたコインを拾おうとしゃがみこんだところだった。
どうやらホットドックを買おうとしたみたい。
でもコインはどこかへ転がっ行ってしまったらしく
「Please wait a moment」
と言ってポケットの中を探し始めた。
でも・・・どうやら小銭がない様子。
私はその男性の顔を見て驚いた。
ゆうべフェリーで会って・・クラブでぶつかったあの男性だったから。
売り子のおばさんは
「どうするの?」
と言わんばかりに彼にホットドッグを差し出している。
私はコートのポケットからコインを取り出して売り子のおばさんにホットドックの代金を渡した。
驚いたように私の方に顔を向けた彼と目があったその瞬間に信号が青に変わった。
何か言いかけた彼に笑顔で答え私は走って信号を渡った。
店に到着したのは開店まもなくのだった。
私は店員に頼んでいたのものは来ているか聞いた。
「少々お待ちください」
そう言ってバックヤードに行ったきり店員はなかなか戻ってこない。
開店直後ということもあり店の中はまだ閑散としている。
どれくらい待っただろうか。
戻ってきた店員が
「商品の到着が遅れている。あと30分程度待ってもらえるか」
と言ってきた。
私はあっけにとられた。
「昨日電話した時に10時には必ずお渡しできますとおっしゃいましたよね・・・実はもう3度目ですが」
と感情を抑えて冷静に言った。
「大変申し訳ありません。」
あまり申し訳なさそうでない言い方で女性店員はそう言った。
これ以上文句を言っても仕方がない。
私は窓際に置いてある高級感たっぷりのソファに座って外を眺めて時間をつぶすことにした。
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Luna - 実はリリーさんの事結構観察してますのん(笑) (2014年2月11日 1時) (レス) id: 9794dabceb (このIDを非表示/違反報告)
ひでみん(プロフ) - りりーさん、中々いい事言うわ(笑) (2014年2月8日 1時) (レス) id: 5e098d8614 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - ともさん» ともちゃん♪感想ありがとう!! (2014年1月30日 21時) (レス) id: 9794dabceb (このIDを非表示/違反報告)
とも - 設定がいいわあ!次が楽しみー (2014年1月29日 19時) (レス) id: 4f5cef5ee4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Luna | 作成日時:2014年1月13日 22時