43両目 ページ46
口をもごもごとさせて沈黙を貫いていたAだったが、クダリによってそれは破られた。
「あはっ、冗談だよ!変なこと言ってごめんね。」
「そ、そうですか。大丈夫です。」
クダリとノボリのことは、人として、上司として、異性としてかっこいいなと思っていることは事実である。しかし恋愛対象としては、未だかつて見たことはない。そのせいだろうか、余計にドキドキしてしまう。
「え、顔真っ赤だよ?もしかして本当に僕のことが__」
「ち、違います!断じて違いますっ。
ほ、ほら、続き早くやって早く寝ましょう!」
ネグリジェを掴みながら背筋を伸ばして座り直すA。彼女のネグリジェの裾が持ち上がり、関節のはっきりとした足首が覗いた。
「あ…。」
いつもは見せない取り乱した姿、珍しいネグリジェ姿。それに加えて自分のことをかっこいいとか綺麗だとか、整っているとか言ってきた彼女。兄のことも含まれているとはいえ、純粋に嬉しかった。
「っ…!」
白ボスは息を呑んだ。彼の視線は仕事をする格好ではない、自分の隣の席に座っている部下を捉える。だがしかし、パソコンに集中している部下は気づいていない。
(あ、やばっ。)
髪の毛も、襟や裾から露出している首筋や鎖骨、手首や足首も。
その何もかもに、白ボスの胸の鼓動が高鳴る。少し苦しい。心なしか、Tシャツから覗く腕の血管が、いつもより浮き出ている気がしてきた。
クダリは思わず口を左の手のひらで覆った。きっかけなんて薄っぺらなこともある。些細なこともある。
白ボスは確実に、Aに落ちた。
「クダリさん、私は終わりましたよ。ということで、ドヤ顔でも披露しておきますね。」
いつも通りの態度で完成した資料を渡してきたA。彼女はどうやら落ち着いたようだ。
それにはっとさせられ、改めてAと向き合うクダリ。
「クダリさん、発熱ですか!?顔赤いです。
睡眠不足が関係してるかもしれないし、早く寝ましょう。」
Aはクダリの手を引いて立ち上がらせ、そのまま執務室の明かりを消し、仮眠室を目指す。退室前にチラッと時計を確認してみると、もう6時半。夜勤組の始業まで、あと2時間半しかない。
クダリは頭の整理がつかないまま、仮眠室の入り口までたどり着いた。
84人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黄々(プロフ) - 黒曜楼乱さん» コメントありがとうございます。迷いに迷いましたっ…!これからも応援よろしくお願いします! (2022年3月26日 20時) (レス) id: 508fa87563 (このIDを非表示/違反報告)
黒曜楼乱(プロフ) - ノボリオチ…だと!?!?最高ですありがとうございます!!応援してます!! (2022年3月26日 15時) (レス) @page39 id: 7e59e19b9f (このIDを非表示/違反報告)
黄々(プロフ) - 眠い羊ちゃんさん» コメントありがとうございます。恐縮です。好きになってくださってありがとうございます! (2022年3月12日 16時) (レス) id: 508fa87563 (このIDを非表示/違反報告)
眠い羊ちゃん(プロフ) - この作品大好きです!更新楽しみにしています! (2022年3月12日 0時) (レス) @page26 id: 0bb018741b (このIDを非表示/違反報告)
黄々(プロフ) - カミツレ味噌五郎さん» コメントありがとうございます。大変嬉しいです!これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2022年3月11日 22時) (レス) @page24 id: 508fa87563 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黄々 | 作成日時:2022年2月25日 11時