29両目 ページ31
この日は仕事が休みであったため、Aは隣の街のホドモエシティに訪れている。
お目当てはもちろん、ホドモエマーケット。このマーケットにはイッシュ地方の名産物が並ぶのだ。休みの日、外へ出掛けるときはほとんどこのマーケット目当てである。
ヒウンアイスにホドモエシティで採れた野菜や果物の直売、シッポウシティのアーティストの作品などなど。食べ物から芸術作品までたくさんの商品が並べられ、その周りをたくさんの人やポケモンが行き来している。
「いつ来てもすごい人の数だね、エルレイド。」
買い物をする時の荷物持ちは決まってエルレイドの役目である。そんな彼は嫌な顔一つせずAに仕える、穏やかな性格の持ち主だ。
この日は果物を大量に購入し、フルーツサンドやフルーツ飴を作ってみようと考えたAは、さっそく果物売り場へと直行する。しかし売り場へ行く途中、見たことのある後ろ姿を発見。黒い膝丈のコートに黒い靴、ダークブラウンの帽子。帽子とコートの襟の間から除く髪色、その人の体型、特徴的な形をしたもみあげ。それらをよく観察して誰なのかすぐに分かったのだが___
(黒ボスと白ボスどっちなんだ!)
いつもとは違う服装をしているし、二人の区別をはっきりさせる象徴である口元がよく見えないので、どちらなのかはっきりと分からない。呼び間違える方が恥ずかしいから、素直にどちらでしょうかって聞こうっと。そうしてAは上司の近くへささっと移動し、話し掛けてみる。
「あの、どちらでしょうか?」
「え?」
この女、話しかける言葉を間違えたのだ。いつもと服装の違う上司を見て緊張したのだろう。最もいきなり話し掛ける言葉として、 「どちらでしょうか」は失礼が過ぎる前に主語がないので、相手からしてみれば言葉の意味が理解できない。
焦ってテンパりながら「あー、違うんです。言葉を間違えました。」とか言った後、直ぐに言い直す。
「こんにちは、サブウェイマスター。部下らしからぬことをお聞きしますが、あなたは黒ボス白ボスどちらでしょうか…?」
サブウェイマスターの顔がぱっと明るくなったと同時に、その特徴的な口元がはっきりとした形に固定される。
「白ボス、クダリでしたー!
Aさんこんにちは!君も買い物に来てたんだね。」
口元を見ないと判別することができないなんて、私は部下としてまだまだだな。
スパルタじみたことを考えながら、素敵な笑顔を向けてくる上司の顔を見つめた。
84人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黄々(プロフ) - 黒曜楼乱さん» コメントありがとうございます。迷いに迷いましたっ…!これからも応援よろしくお願いします! (2022年3月26日 20時) (レス) id: 508fa87563 (このIDを非表示/違反報告)
黒曜楼乱(プロフ) - ノボリオチ…だと!?!?最高ですありがとうございます!!応援してます!! (2022年3月26日 15時) (レス) @page39 id: 7e59e19b9f (このIDを非表示/違反報告)
黄々(プロフ) - 眠い羊ちゃんさん» コメントありがとうございます。恐縮です。好きになってくださってありがとうございます! (2022年3月12日 16時) (レス) id: 508fa87563 (このIDを非表示/違反報告)
眠い羊ちゃん(プロフ) - この作品大好きです!更新楽しみにしています! (2022年3月12日 0時) (レス) @page26 id: 0bb018741b (このIDを非表示/違反報告)
黄々(プロフ) - カミツレ味噌五郎さん» コメントありがとうございます。大変嬉しいです!これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2022年3月11日 22時) (レス) @page24 id: 508fa87563 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黄々 | 作成日時:2022年2月25日 11時