続 ページ6
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『やっぱりはるとくんだった、1位。』
彼女は笑う。
コーチが彼女にストップウォッチを返すと、そのまままっすぐ彼女はこちらに歩いて来た。
「速かったでしょ。」
『うん。さすがだね。』
抱き着いてきた彼女を受け止めて、髪の毛を梳くように撫でる。
爽やかなシトラスの香水が鼻をくすぐって、彼女をこの腕の中に閉じ込めていることを実感した。
「ご褒美何くれます？」
『はるとくんは何が欲しい？』
「決めていいんすか？」
『うーん……、犯罪とかじゃなければ……？』
「…………過去になんかありました？」
真面目な顔をして犯罪を危惧する彼女が面白くて、ちょっと吹き出してしまった。
しかしご褒美を決めていいと言われると、嬉しいような迷うような複雑な感情だ。今こうして抱き締めているだけでも、それがご褒美だと言われればそんな気さえしてくるくらい、満ち足りた感情になってしまう。
『何か買ってあげようか。』
「それはさすがに悪いっすよ、申し訳ないです。」
たかがダッシュ練習で勝っただけのことに、彼女は本気で報酬を考えてくれている。
『でもそれ以外思いつかないや、』
「あー、そうっすよね、じゃあ……どうしようかな…。」
ご褒美はAさん自身が良いです、とか言ってどんな解釈をされるのかも面白そうだが、周りにいる人に誤解されるのも面倒だし。
困った顔で彼女が首を傾げた拍子に、またふわりとシトラスの香りがした。
「あ、じゃあ、」
『ん、なぁに、』
「1週間でいいんで、俺の香水つけてくださいよ。」
『……私があげるんじゃなくていいの？』
「良いです。俺がそうしたいんで。」
『それくらいなら、全然。』
「よっしゃ、じゃあ明日から香水つけずに来てくださいね？」
『うん、わかった。』
よし、と心の中でガッツポーズして、より強く彼女を抱き締める。
シトラスの香りが少しずつ自分の香りに変わっていく気がして、まるで彼女が自分のものになったかのような錯覚に陥った。
次の日から宣言通り、練習前に彼女に自分の香水を振ってやった。
男物の香りを纏う彼女は、いつもより少しだけ他のみんなから距離を取られている気がする。
「Aさん、」
『あ、はるとくん。』
抱き締めると、彼女は嬉しそうに笑う。
「俺のもの、って感じ、しますね。」
『……じゃあ、ご褒美はわたし、ってことだね、』
彼女はそう言って目を細める。
その笑顔は今まで見たことがないくらい、妖艶で美しく見えた。
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かがみみお(プロフ) - うみさん» こちらこそ素敵なリクエストとご感想ありがとうございます！更新がんばります🤗 (12月12日 23時) (
レス) id: 937947437c (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 早速リクエストに答えていただきありがとうございました！癒されました！また更新されるの楽しみに待ってます(^^) (12月12日 22時) (レス) id: b1b3506f25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かがみみお | 作成日時：2023年12月12日 11時
