変容の先で混ざり合え #7 ページ27
.
上下関係が良い意味で希薄で、人と人との距離が近いチーム。とにかく雰囲気が良い。三連覇しているのだから当然だ。
このチームに来た時、初めにそんなことを思った。
でもまさか、スタッフとの距離までこんなに近いとは思っていなかった。
「…また寝てるやん、夜寝てへんの？」
『む…、りょーまさんには関係ないです、』
「おぉー相変わらずやな、赤ちゃん。」
『そうやってすぐ赤ちゃんって言う…！』
嫌いです、と彼女は目を伏せた。
日頃から抱っこやおんぶを享受しながらすやすやと眠る彼女は、子ども扱いされるのだけはどうも嫌らしい。
…割とみんな子ども扱いしてないか？自分と何が違うんだ？
「そうツンツンしなや。目覚めてまうで？」
『好都合です！ふんっ。』
いつも誰彼構わずべったりとくっついている彼女は、自分にはそうはしたくないようだ。
話しかけられるといつも眠たげに細められている目をさらに細くして、鋭い目つきで逃げて行ってしまう。
懐く前の猫みたいだな、とか言ってしまうとまた怒るのだろう。
こんな女の子に絆されているチームメイトも、この子自身についても、なんだか面白くて仕方がなかった。
▽
ナイターでの試合終了後。
残っていたチームメイトにひと声かけてからリュックを背負ってロッカールームを出ると、廊下の壁にもたれ掛かっている女性を見つけた。
「Aちゃんやん。また寝てんの？」
『げ、りょーまさん。』
くるりと振り返った彼女は、昼間とは見違えるほどぱっちりと目を開いている。これが本来の姿なのだろうか。
「早よ帰らんとまた昼に眠なんで？」
『まだ仕事中ですー。』
「え？明日も試合やのに？選手より来るん早いやろ？」
『…まあ、それが仕事ですし。』
彼女はふう、と息を吐いてから大きく伸びをした。
ついでに首もぐるんと回すと、よし、と小さく呟いて気合いを入れ直したようだ。
いつもシトラスの香りがする香水は、時間が経ったからかウッド系の香りに変わっていた。
「何時に終わるん？」
『え、まぁあと30分くらい…？』
「帰り電車？終電ある？」
『無かったら歩いて帰るだけですよ。そんな遠くないですし。』
彼女は事も無げにそう言った。
まるでいつもそうしているかのような口ぶりだ。
「あんま遅なったら危ないやろ。30分くらいなら待つし送ろか？」
『結構です。では。』
引き止めることすらできず、彼女はスタスタと去って行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 508人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「プロ野球」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かがみみお(プロフ) - うみさん» こちらこそ素敵なリクエストとご感想ありがとうございます！更新がんばります🤗 (12月12日 23時) (
レス) id: 937947437c (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 早速リクエストに答えていただきありがとうございました！癒されました！また更新されるの楽しみに待ってます(^^) (12月12日 22時) (レス) id: b1b3506f25 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かがみみお | 作成日時：2023年12月12日 11時
