共犯者 #24 @req ページ23
.
練習と練習のインターバルの時間。
ひとりの選手が目に入った。
『…こら、』
「え？」
グラウンドに堂々と座って、送風機の風を間近に浴びながらおにぎりを頬張る彼。
爆風でパーマヘアが暴れているけれど、そんなことはものともせずにもぐもぐと口を動かしている。
『球場内飲食禁止ですよ、』
「…あー…そうでしたっけ、すんません。」
もぐもぐ。
それでも食べる手を止めない。
『こーたろーくん、』
「…残すのはもっと悪いかなって。」
『……作ってくれた人がいるからね…。』
「でしょ。」
後から食べたら良いとかそんな発想にはならない。
今食べなければまた練習が始まるし、そうなったらこのおにぎりは腐るか潰れるかの未来を辿ってしまう。
そもそも持ってきたらだめなんだよ、と言うと、宙を見ながら少し考えた彼は、もうひとつ持っていた大きなおにぎりを差し出してきた。
『私が持ってたら良いってわけでもないんだよ？』
「え？いやそうじゃなくて、」
そのまま手を引かれて、彼の隣に座らされた。
爆風で髪の毛が舞ってしまうけれど、まあ涼しいと言えば涼しい。
「一緒に食べましょ。腹減ってるでしょ、Aさんも。」
押し付けるようにおにぎりを渡されて、思わず受け取ってしまう。
ラップに包まれたそれはまだ温かく、休憩の開始とともに調達してきたことが窺える。
『…なにあじ、』
「唐揚げっす。」
ミートボールもあります、と彼はもうひとつおにぎりを取り出した。どこから湧いてくるのか不思議なくらいだ。
『…唐揚げもらう、』
「どうぞ。」
お腹は空いてるし。捨てるより良いよね。誰も見てないしね。
そう言い訳しながら、具までがやたら遠い大きなおにぎりにかぶりついた。
やっと唐揚げに到達した時には、隣の彼はミートボールおにぎりを頬張っていた。
『…おいしい。』
「でしょ。」
彼は目を細めてくしゃっと笑った。
「これでAさんも共犯、ですね？」
『…やられたぁ。』
ははっ、と彼は声を上げた。
風情の欠片もない爆風が私たちを包む。
「Aさんって、意外と単純ですよね。」
『……うるさいよ、黙って食べて。』
「食べていいんですね、やったあ。」
『…参りました。』
「勝ちました。」
ぼさぼさになった髪の毛を、さらにぼさぼさになるように撫でられる。
たまにはやられっぱなしも悪くないかと諦めると、彼はまた楽しそうに笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 505人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かがみみお(プロフ) - うみさん» こちらこそ素敵なリクエストとご感想ありがとうございます！更新がんばります🤗 (12月12日 23時) (
レス) id: 937947437c (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 早速リクエストに答えていただきありがとうございました！癒されました！また更新されるの楽しみに待ってます(^^) (12月12日 22時) (レス) id: b1b3506f25 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かがみみお | 作成日時：2023年12月12日 11時
