素顔を見せて #2 @req ページ17
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『けんけん、』
「はーい。」
練習のために移動すると、Aちゃんはもう既に準備を完了させて待ってくれていた。
『キャッチャーさん達が使う道具、このへんでいいかな、』
「うん、ばっちり。いつもありがとうね。」
ぽん、と頭を撫でると、急に彼女が顔をしかめた。
「え、なに、どしたの？」
『…っん、なんでもない、』
「なんでもなくないでしょ、なんで泣いてるの？」
ぐっと眉をひそめたかと思えば、みるみるうちに目に涙を溜める彼女。なんでもないと強がって、取り繕えば取り繕うほど、涙がぽろぽろとこぼれていく。
「…ちょっと、こっち来て。」
『ん…、』
幸いまだ人は多くない。隅に連れて行くと、彼女はさらに大粒の涙を流していく。
持っていたタオルを渡して、彼女を隠すようにして立った。
「なんかあった？」
『…特に、なんにもないんだけどね、』
「うん、」
『なんか、つらくて、』
彼女はタオルに顔を埋めて泣く。
しゃくりあげながら肩を震わせていて、声も途切れ途切れだ。
抱き寄せて背中を撫でると、もう我慢できないというように胸に飛び込んできた。
『けんけんにありがとって言われたら、なんか、涙出てきちゃって…っ、』
「うんうん。…いっぱいいっぱいになってたのかな、いつも頑張ってくれてるからね。」
『っ、そんなこと、ない、』
「あるよ。Aちゃんはいつも頑張ってくれてる。俺は見てるから分かる。」
『〜〜っ、けんけんのばか、』
「そうだね、ごめんね。バカだからもっと泣かせちゃうね。…Aちゃん頑張ってるよ、えらいえらい。」
『ゔ〜〜っ、ぐすっ、うぅっ、』
ぎゅう、としがみついて泣く彼女は、到底同い年とは思えない。
小さい子のように声を上げて泣く彼女をぎゅっと抱き締めると、彼女もさらに強く抱き着いてきた。
いろいろと、抱えるものが多いのだろうなと思う。
仕事内容こそ複雑ではないけれど、力仕事を小さな体で文句ひとつ言わずこなし、選手との関係にも気を遣いながら、全力で自分たちを支えてくれている。
支える側の苦悩もあるのだろう。
もし自分の言動が選手のコンディションに影響したら、なんて彼女が考えているか分からないけれど。
「…たまにはこうやって、素を見せてくれたら良いから。」
『ん、ふぅっ、ありがと…、〜〜っ、けんけん…！』
あぁ、また泣いた。
頼られることの嬉しさと、あまりに泣きすぎる彼女が少しだけ面白くて、彼女に見られないように少しだけ笑った。
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かがみみお(プロフ) - うみさん» こちらこそ素敵なリクエストとご感想ありがとうございます！更新がんばります🤗 (12月12日 23時) (
レス) id: 937947437c (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 早速リクエストに答えていただきありがとうございました！癒されました！また更新されるの楽しみに待ってます(^^) (12月12日 22時) (レス) id: b1b3506f25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かがみみお | 作成日時：2023年12月12日 11時
