少女と狗２ ページ4
不味い、最も恐れていた事が起こった...
知らない土地。
知らない人。
知らない＿＿強者。
どうする？どうすれば逃げられる？
考えろ、考えろ...
『そっちこそ、誰だ？』
不安を、相手に悟らせてはならない。
あくまで冷静を装わねば。
「...僕が先に貴様に問った筈だ。
ここで何をしてるかと」
『......何もしてない。
今日を生き抜く為に動いていただけのことだ』
男の目が、スッと細まる。
嘘は云っていない。
幼児の嘘等、よほどの馬鹿でなければ
あっさりバレるのが終いだ。
だから私は真実で偽る。
「...問い方が悪かったようだ。
＿＿＿＿＿＿＿何が目的だ？」
『....目的？』
「然り。
此処等は貧民街の中でも異質の地。
地下組織や裏組織と云った非合法組織が
ひしめく、他とは似て非なる場。
...そして、この路地で育った者であれば
知っていよう。
＿＿それ等と接触をしてしまった者の末路を」
この男の瞳が、その闇の深さが
答えを物語っていた。
この男＿＿否、この少年は
私と似たような境遇で生きてきたのだ。
そして、仲間を失っていったのだろう。
少年の境遇を映しているように、
その瞳は真っ暗であった。
「それだけには収まらぬ。
此処等ではつい先日まで大きな抗争が行われ、
路上に住まう人間のほとんどが命を散らした。」
散策の時にした違和感はそれか...
ゴミ箱と異なるとは云え、人が少な過ぎる。
抗争の際に消えたのか
「故に、貴様のような小僧が
"此処にいる"
と云う事実が可笑しな事。」
少年の雰囲気が変わる。
それと同時に、少年の纏う黒い外套が
ゆらゆらと、何もかもを呑み込むように揺れる。
「もう一度だけ問う」
嗚呼、これは
「此処で何をしている」
血に慣れた者の纏う雰囲気だ。
＿＿＿＿＿けれど。
私も、それを知っている。
『云った筈だ。
生き抜く為に動いていただけだと』
そう云って散策の時に拾った鉄パイプを構える。
「...残念だ。
もう少し頭の切れる小僧かと思っていたが
検討違いのようだ。
そんな鉄屑で僕の命を止めれるとでも？」
『生憎、そこまで堕ちてはいない。
.......止めれると判っているから挑んでいるに決まっているだろう？』
私がそう云った瞬間。
少年の外套が音を置き去りに私に迫った。
「調子に乗るな、小僧」
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作者名：al作者 | 作成日時：2018年12月15日 15時
