少女とポートマフィア12 ページ17
『___私は、Aです。
それ以外の何者にもなれません。
ただの、貧民街出身の孤児です』
首領を真っ直ぐに見つめて
そう告げる。
嘘偽りのない、信実を。
「...云う気はないようだね」
『いいえ、そうではないです。
ただ、明かすのは今ではないと判断したまでです。
____云うのなら、首領、貴方だけに云います』
自分がこの世界において異質な存在であることは
理解していた。
故に、危険視されてしまう事もまた理解していた。
そうなると、強くなる前に、幸せになる前に、
私の存在が消されてしまう可能性が
大いに出てきてしまう。
だから、今ではないのだ。
「__そうかい、
ポートマフィアへようこそ、
今日から此所が君の職場だよ」
『...!ありがとうございます...』
私の思いを汲んでくれたのだろう。
危険粒子となるかもしれない私を、
受け入れてくれた...。
ほっとして、思わず今まで保ってきた
表情筋が緩む。
「!..................ほう。
時にA君」
『はい』
「その服装では、此所で働くのに何かと不便だろう?
後で服を用意するからまた来なさい」
『確かに、そうですね。
ありがとうございます』
親切な申し出に素直に頷いた私に、
部屋を出た後、
中原さんが何やら激励の言葉を
掛けてくださった意味を
この後嫌でも理解することになるとは、
この時の私には想像もつかなかった。
61人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:al作者 | 作成日時:2018年12月15日 15時