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「着いたわよ」
強風が下から舞う様に吹き抜ける。私達が飛行船で案内された先は、下をのぞき込んでも地面も水辺も見えない、底無しのような切り立った渓谷の上だった。
「下はどうなってるんだ…」
「安心して、下は深ーい河よ。流れが早いから、落ちたら数十km先の海までノンストップだけど」
何処かから聞こえた受験者の問いに、緑髪の試験官は何故か靴下を脱ぎながら答える。やっと脱ぎ終え、適当に靴下を地面へと放ればそれじゃ、と崖から飛び降りていった。
『えっ!』
「えっ?」
思わずゴンと声を上げれば、後ろの方でも受験者達にどよめきが起こりクラピカ達も驚いている様子だった。こんな渓谷になんの卵があるというのだろう。
「マフタツ山に生息するクモワシ、その卵を取りに行ったんじゃよ」
心の声でも聞かれていたのか、老人はそう説明する。崖下を覗き込んで暫くすれば、試験官はひょっこりと崖の岩肌をよじ登って戻って来た。
「あーよかった!」
「こういうのを待ってたんだよね」
『思ったより簡単でよかったね!』
「だな。走るのやら民族料理やらよりよっぽど早くてわかりやすいぜ」
その様子を見た私達は口々に安堵の言葉を掛け合う。そして息を合わせて崖まで駆ければ、そのまま飛び込む様に崖下へと落下した。
『よっと、皆平気〜?』
「うん、余裕余裕」
途中に張り巡らされた糸の一本にぶら下がれば、辺りを見渡して大きく声をかける。全員きっちり器用にも糸を掴めた様で、顔を見合わせて微笑み掛けた。
試験官と同様に卵を一つ頂戴して、念を岩壁に貼り付け一気に駆け上がれば辺りからは驚愕の声が聞こえた。
「えっ今のどうやったの!?」
「まるでスタントマンみたいだったぞ」
『ん〜内緒!皆もいつか出来るようになるよ』
きっと、と一言付け加えれば、怪訝そうな顔でゴンとクラピカは首を傾げる。きっと彼らなら試験を合格して念まで辿り着くだろう。まだ短い間だが、接していてそんな気がしたのだ。
『卵こっちで茹でるんだって!』
「もーまた内緒?」
『また内緒!』
「もー!今度絶対教えてね!」
誤魔化す様にいつの間にかに用意されていた大鍋を指差し声を掛ければ、ゴンは不満そうに声を上げる。幾度か背中を優しく叩けば、諦めたのかむくれながら卵を近くに立つ試験官に手渡した。
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あるぱか(プロフ) - mikanさん» mikan様。コメント共にご指摘ありがとうございます。修正いたしますので、暫くお待ちくださいませ。 (2022年11月22日 2時) (レス) id: 815005bab2 (このIDを非表示/違反報告)
mikan(プロフ) - コメント失礼します。試験官がずっと試験管で気になってしまいます。余裕があれば直していただきたい (2022年11月22日 1時) (レス) @page11 id: 482089f0ab (このIDを非表示/違反報告)
あるぱか(プロフ) - みこさん» みこ様。コメント共にありがたいお言葉ありがとうございますm(_ _)m お陰様で大変励みになります。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。 (2022年5月18日 8時) (レス) id: fbddfe63cf (このIDを非表示/違反報告)
みこ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!とても面白かったです!次の更新を楽しみにしています!!(*´˘`*)頑張ってください!!応援してますっ (2022年5月18日 8時) (レス) @page31 id: e77f4d9956 (このIDを非表示/違反報告)
あるぱか(プロフ) - オレンジさん» オレンジ様。コメント有難う御座います!イラストは頑張って仕上げた方なので大変嬉しい限りです…;; お言葉誠に有難う御座います。更新の方もゆっくりになりますが、暫しお待ち頂ければ幸いです。これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます…! (2018年3月10日 20時) (レス) id: fbddfe63cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あるぱか | 作成日時:2017年12月31日 17時