.*Fragile.*【sho.hirano】

キスマーク-yuya- ページ6

聞かなくても、それがキスマークだってことは

見ればわかる。






知りたかったのは、


それを、誰が付けたのかってこと。







A「これは、その........」



恥ずかしそうに目をそらすA。






祐也「彼氏？」






なかなか切り出そうとしない彼女に

そう尋ねると、静かにコクッと頷いた。









Aに久しぶりに再会した内定者懇親会の日から、

彼女にそういう相手がいたのは知っていた。








祐也「懇親会の後、

送って行ったマンションの下で

偶然、鉢合わせた........あの人？」







その質問にも、黙ってAは頷いた。








あの時Aは、親戚の男の子だって

とっさに言い張ってたけど、




それが嘘だってことも、

なんとなくわかってた。





わかってて、わからないフリをした。




ただの親戚の子だって........そう思っておけば、

俺にもまだチャンスがあるって思ったから.......









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大学生の時にした短期のバイトで

俺はAに出会った。






よく笑う子で、元気で、明るくて......

俺の一目惚れだった。






バイトが終わるまでの期間で、

必死にアプローチして、告白して、

俺たちは付き合うようになって.........





だけど、大学も違う、バイト先も違う、

住むところも離れてた俺たちは、


すれ違いの日々が続いてしまっていた。








会えない日が続いても、

Aは一度も寂しいとか、会いたいとか

そういうことを言わなくて.......







いつだって、「大丈夫」「平気だよっ」って

明るくそう言ってたから、



俺のこと好きじゃないのかなって.......不安を感じてた。






そんな時、俺の前には、

俺のことを一途に必要としてくれる女の子が

現れて.......



いつしか、その子の側にいてあげたいって

思うようになった。







Aに別れを告げた時、


彼女は、「大丈夫だよっ.........ありがとう」って

唇を噛み締めて、そう言った。







その時、初めて気づいたんだ。

Aが大丈夫って電話越しに言ってた時、

いつもわずかな、沈黙があった。





ずっと明るく言ってくれてたから

気づかなかったけど、




電話の向こうでいつも、

唇を噛み締めて我慢してたんだって........









でも、気付いた後には手遅れで......


俺は、彼女を手放した。

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