.*Fragile.*【sho.hirano】

最後の笑顔 ページ29

A「紫耀……」





名前を呼ぶと、


彼は振り返ってあたしを見る。









久しぶりに見る紫耀は.......





前よりも痩せて見えた。









たくさん苦しい思いさせたんだね……







悩ませてごめん……






そんな気持ちが押し寄せてくる。









A「久しぶり」


と声をかけると







紫耀「久しぶり」



そう言って彼は、切なく笑う。









その表情を見るのがつらかった。








そんな顔をさせてるのは........






あたしだから.........









ただゆっくりと.......時間だけが流れてく。








静かに、ゆっくりと.........









彼は、あたしの顔色をうかがいながら言葉を発した。









紫耀「元気だった？」






A「うん......」









挨拶程度の中身のない会話。









あたしたちはお互いに、




何て声をかければいいのか、わからなかった。









一度空いてしまった溝は





なかなか埋まることはない。









紫耀は、



腫れ物に触るみたいに、あたしに接する。









傷付けないように、




お互いが気をつかいながら……言葉を選んで話す。









それが、つらかった……









静けさが漂う暗闇は、お互いの声がよく響く。









あたしたち以外に何もない、２人だけの空間……









A「紫耀……」







声をかけると、彼はあたしの目を優しく見つめた。









「......最近.................笑ってる？」






そんな突然の質問に彼は驚きながらも、









「笑ってるよ」



と精一杯の笑顔を見せる。









その笑顔は、あたしが久しぶりに見た

大好きな彼の笑顔。









無理して見せる笑顔だとわかってはいるけれど、






その笑顔が愛しかった。









A「そっか..........良かった..........」






あたしも、精一杯の笑顔で答えた。









そして、彼の顔をしっかりと目に焼き付けた。









だって...........この笑顔が、








あたしが見る、最後の笑顔かもしれないから………









あたしの前でほほえむ





あたしのためだけの









最後の笑顔………

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