.*Fragile.*【sho.hirano】

心の痛み ページ22

A「離してっ.......」







抵抗したって、びくともしない。







祐也「離さない.........」









耳元で、切なく響く彼の声。









A「なんで..........」





祐也はさらに強く、あたしを抱きしめる。









祐也「Aが全然..........幸せに見えないんだよ...」









その言葉に、あたしは固まった。







"幸せ"..........？









ついこの前まで、即答できたはずの答えが

今はわからない。







紫耀の隣にいることが、1番の幸せだった。



なのに今は.......





紫耀の顔を見ることが..................何よりもつらい。









心の中が......気を抜くとすぐに真っ黒になって、


苦しくなって.......つらくなって........






あたしの瞳から、一筋の涙がこぼれる。








その時だった.....









ーーーーーーーーーーーー「........何してんだよ...」









暗闇から響いたその声に、

あたしはすぐ、祐也から体を離して振り向いた。






何度も聞いたことのあるその声........








A「...........紫耀」







車が停めてある車道側から、

こっちに向かって歩いてくる。







あたし達２人の姿を見つめる彼の表情は、

どこか切なげで、

すごく傷ついた顔をしていて...........






そんな顔をさせてしまったのが、

自分のせいだと思うと、




かける言葉が見つからない.......







何も言えずにいたあたしをかばうように、

祐也が言葉を挟む。









祐也「Aは何も悪くない。」









「俺が勝手に.........抱きしめたんだ......」









その言葉が、さらに紫耀の怒りに火をつける。









紫耀「........あんたには聞いてねーよっ.......！」







こんなにも怒りをあらわにする彼を見たのは、

初めてだった。








紫耀は、あたしの腕を強く引くと、

そのまま車へと連れて行く。









ーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーーーーーーーーーー








勢いよく、走り出す車。






紫耀は、何も言わず、

一度もこっちを見ることなく、

無言のまま運転を続けていた。











彼に掴まれた腕が.............ズキズキと痛い。





だけどこの痛みは、

あたしが彼に与えた心の痛みで.......









それを分かっているからこそ.......









あたしは何も、




話を切り出すことができなかったんだ...........

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