岩 田 図 鑑

9 ページ9

岩「ねぇ〜、Aー、髪乾かしてー！」


お風呂上がりのいつもの彼のおねだり。

………嫌だ、なんて言えると思う？



「ほんっと手のかかるワンコだわ……」

岩「ワンコじゃねぇわ、どっちか言うたら狼っしょ」

「…………自分でわかってんなら世話ないよ(笑)」



剛典のサラサラの髪に指を通す。

ついこの前までは金髪だったのに、今は茶色。

「ねぇ、あんまり髪の色とかうるさく言われない職種？」

岩「…………ねぇ、素で言ってんの？」

「は？何が？」

岩「……いや、よっぽど浮世離れしてんだなぁと思ってさ(笑)」

「何それー？」

岩「なんでもなーい。いいよ、俺はお前のワンコで」

「ふふ、だから、どっちか言うたら狼でしょうが(笑)」




くるんって振り向いた剛典の目は、もう獰猛な雄の狼のそれで。

優しく、でも力強く手首を掴まれる。



岩「じゃあ毎晩俺に喰われちゃうお前は、さしずめ……赤ずきんさん？」


思わず吹き出す。


「ちょ(笑)赤ずきん『ちゃん』、じゃないんだ？」

岩「毎晩俺のこと翻弄する悪いオトナの女は、赤ずきん『さん』、じゃね(笑)？


こんなに夢中にさせて、どうしてくれんの？」



決定的な言葉は何もない。
それを望んでるわけでもない。


でも、2人の間にある、身体だけじゃない繋がりが心地よくて。


あなたは私をどう思ってるの？

その一言を躊躇っていると、彼の唇が私の言葉を飲み込むようにふさいだ。









.

10→←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す