岩 田 図 鑑

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「……………剛典？」

岩「ん？」

「……………好き…………愛してるよ」

岩「俺も。俺もすげー愛してるよ」



だから、わかるんだよ。

あなたはきっと全力でこの恋を守る。

私のことを守る。


例え、自分を盾にしてでも。



そして私はきっとどんどん欲張りになるだろう。

剛典の気持ちや立場を理解したいのに、理解出来なくなってくだろう。

私だけのものじゃない彼に、不満と不安を募らせて

押しつぶされてしまうだろう。



岩「なぁ……」

「ねぇ、剛典」

彼が何か言う前に。


「私には、無理だよ」


岩「………え？
……何言ってんの……」

「剛典のこと、すごく好きだから。

だから無理、これ以上一緒にいるのは」



今も、何も悪いことなんてしてないのに剛典のことを責めたくなってる。

私は弱くてズルいから。

「よく、わかんなくて……なんでこんな気持ちをかき乱されてるのか……。
だから……ごめん。一緒にいられない……」


剛典のひどく傷ついた目を見ていられなくて俯いた。


岩「…………わかった、から。
少し時間置こう？すぐに答え出そうとすんなよ……」


涙が溢れて何も言えず、ただ頭を横に振った。


私は知ってたはず。


人を好きになったら、楽しいだけじゃないって。
悲しくて、苦しくて、つらいものなんだって。

剛典との時間がただただ幸せだったのは、
私たちの恋は、この部屋の中だけのものだったから。

剛典が外で背負うプレッシャーや苦労なんて知らずにいたから。


この部屋に守られて、他の誰にも邪魔されず、お互いを見つめていられたから。



でもほんとは、恋なんてもっと生々しい。

汚かったり醜かったり痛かったり。
それを2人で乗り越えて強くなるのに。

そうすることも出来たのに、しなかった。

それが今に繋がってる。



「………剛典、ごめんなさい………出てって……」




ねぇ、剛典？

あのとき私から手を離さなければ。
あなたを信じ抜いていたなら。

私たちは今も一緒にいられたかな？









私だけの狼は、もういない。









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