【歌.い.手】男装歌い手はじめました【そらる】 (ページ39)

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#39 黒い部分ページ39

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「…あのさぁ」

さらに低くなった声色。

それにとうとう怖くなったのか、愛生は大きく愛らしい目いっぱいに涙を浮かべた。

「愛生さんがAのことどう思ってようが自由だけど

流石にこんなことしたら俺もあいつらも黙ってないと思うよ」

昨日までの可愛らしいなまりは抜け、耐えきれないほどの威圧をかけて微笑むさかたん。

正直、その場にいるだけで怖い

それに、あいつらとは誰か。

さかたんに、渉、まふ、そらる…だと思う。

いけてる人を常に身の回りに置きたがる愛生にとってはお気に入りの4人なのではないか。

その人達に酷く嫌われる様子を想像すると…

なんというか、自分の黒い部分が出てくるような感情になる

「俺、Aと話したいことあるから

先、行っててくんない？」

行っててくんない？、

その言葉はオブラートに包まれていても

“消えてくれない？”とも聞き取れた。

「ヒッ…！」

完全に恐怖に顔を歪めた愛生は、溜まった涙を零しながら走り去って行った。

その瞬間、自分の中の意図がプツリと切れたように

その場にしゃがみ込んでしまった

「…っごめんAちゃん、怖かったよな、ごめんなぁ」

慌てて駆け寄り、過呼吸になりかける背中を一生懸命さすりながら謝っている

『…な、んで、さかたんが…あやまるの』

途切れ途切れになる言葉を必死に紡ぎ、

ありがとう、と絞り出す

意識が朦朧とする。

耳にはさかたんの焦る声

背中に伝わるさかたんの手の暖かさ

頬を霞むつめたい風

居た堪れない気持ちを抑えながら、必死に意識を逃さぬよう、歯を食いしばった

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「…大丈夫？落ち着いた？」

目を覚ますと、見慣れた天井

声のする方へと視線だけを動かすと、心配そうに覗くさかたん

「よほど疲れてたんな、ぐっすりだったよ」

あえて、“意識を失って倒れた”とは言わないさかたんは、本当に優しい。

昨日出会ったばかりで騙すような真似してた人を助けて、保健室まで運んでくれてみててくれた。

今まで、この姿で感じなかった優しさを、この数日間でたくさん感じた

本当に、幸せすぎる

『…ありがとう』

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