祈り113 ページ16
ドスッ
突然矢のようなものが私達を横切り、お父さんの足に刺さった。
「なぜ…ですか。」
目を見開き、見上げるお父さんの視線を追うと、踊り場のようなそこに…グレイさんがクロスボウを片手に佇んでいた。
「あぁ、全くだ。ここまで好き勝手するとは…。」
「まだ…まだだ、この手で…」
ドスッ
撃たれてもなお、にじり寄るお父さんにもう1発矢が放たれる。しかしそれは、誰にも届く事はなかった。
「ぐっ…」
『ザック？』
「…は？」
放たれた矢は、ザックが握っていた。レイチェルの横にしゃがんでいた彼は、今お父さんの前に立っている。
「ザック…どうした。」
「……さねぇ。」
「ん？」
「こいつは殺さねぇって言ってんだ！」
なに？どういう事？
レイチェルをこんなにしたんだよ？
普段だったら…殺すでしょ？
「ほう、庇う理由を聞こうか。」
「あ？」
『ザック…。』
熱気を帯びていた空間が静まり返る。皆がザックの言葉を待った。
「Aが、悲しむだろ。」
『？！』
「殺してぇよ、今すぐぶっ殺してぇ！！このクソ野郎が！レイをこんなにしやがって…！！でもな…そんなテメェでも、Aは父親だと思ってんだよ。」
「……。」
『…っ。』
「……父、親ねぇ？」
ザックは…私のために？
そうだ…
ーーくっそ、真っ二つに……ん゛ん、なんでもねぇ。
ーーなぁ、結局ダニーの野郎に会ってないが…探して、釘でも打ちつけといた方が良かったんじゃねぇのか？
あの時から、お父さんに対して1度も殺すって言わなくなってた。
ザックは知ってたんだ
私がまだ
お父さんを信じたいって気持ちを
「そんな理由だけで僕を殺さないのかい？」
「あ？じゃあテメェは惚れた女が悲しむ事すんのかよ。」
ダメだよ…ザック
もう…我慢できないよ
私…
私…
「分かったよ。さぁ、A…こっちにくるんだ。また、一緒に穏やかに過ごそう。」
『お父…さん……？』
「…っ。」
にこやかな、私の好きな笑顔。右手を差し出して、私を待っている。
私は引っ張られるようにお父さんの方へ歩いていく。
ザックの顔は…俯いていて見えない。
『私、お父さんにはとても感謝してる…。でも、やっと自分が居たいって思える場所が見つかったの。』
私は父の手を取らずに、ザックの方を向いて静かに笑う。
『ザック…好きだよ。』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みょん(プロフ) - すっごい良かったです!!面白かったです！ザックの絵がとても上手いです羨ましいです。本当に読んでいる間楽しかったです。楽しい時間をありがとうございました！ (2023年2月25日 18時) (
レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
天邪鬼 - 最後泣けました！次に繋がるように話が書いてあって凄いと思いました! (2023年1月3日 23時) (レス) @page29 id: 04e101ca0d (このIDを非表示/違反報告)
シャノ - とても楽しませていただきました。ありがとうございます！絵がめちゃくちゃ上手いですね...！ (2022年11月7日 21時) (レス) @page29 id: 14aea54ff7 (このIDを非表示/違反報告)
七巳流 - 絵うまっ (2022年8月1日 19時) (レス) @page29 id: 52346b4a47 (このIDを非表示/違反報告)
チエ - 面白かったし最後泣きました。夢主ちゃんとザックが付き合ってよかったです。付き合ったその後をぜひ番外編としてだしてほしいです。 (2022年3月8日 13時) (レス) @page29 id: d855d99d2c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朱璃 | 作成日時：2021年10月13日 15時
