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「お母さん」


リビングでバラエティ番組を見るお母さんの前に私は腰掛ける。
彼女は視線を向けることなく何?と口を開いた。


「私ってなんで記憶なくしたの」


今更。
というような質問だが今まで両親は曖昧な返事しかしてこなかった。


「階段から落ちたんやって言うとるやん」

「なんで、落ちたん? 誰が見つけたん?」


お母さんは何も言わないけれど、宮兄弟のような
「これ以上聞かないで」という結界を張っているような気がした。

私は彼女の横顔を見つめ続ける。
お母さんにもまだ少し記憶が戻ったことは言っていない。


「そんなん、もうどうでもいいやろ」


そう言うとなし食べる?と話を変えた。
バラエティ番組の司会者が嫌味のように大きな声で笑った。



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作者名:栗原 | 作成日時:2018年10月7日 19時

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