☆【ARS】短編集5 ☆ (ページ9)

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忘れられない。O.S ページ9

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雑誌の取材。
「好きな女性のタイプは？」
って言われても困る。

だっておれ
好きなタイプとか、別にねぇし。

てゆうかあんまオンナにきょーみねぇし。

強いて言うなら、
ワガママじゃなくて
俺の言うこと聞いてくれて
面倒くさくないコがいいけど。

そんな子絶対見つかんないもん。

まぁ、見つけようとも思ってないけどね。

彼女、は。
あの時を境に作らなくなった。

忘れもしない
あれは、5年前の冬。

彼女と抱き合って眠る夜。
寒い、と俺に擦り寄る彼女と体温を分け合う。
なにも変わらない。いつもと同じ、冬の夜のはずだった。

「智…あのね、」
「…ん？」
「…ううん、なんでもない」
「そ。じゃあおやすみ」
「うん。おやすみ」

俺の腕の中で。
彼女は、何か言いたげに俺を見上げたけど。

気怠い温度に流されて、すっげ眠たくて。
俺は君の様子に気づいてあげることができなかった。

…思えば、君はずっと気づいてって顔をしてたのに。
俺は、自分のことに精一杯で
一番大事な君のこと、構わずに放置してた。

「…好きな人ができたの。」
涙目で、彼女が俺に報告してきたとき

俺は嵐として売れ始めて
ちょうど軌道に乗ってきたときで。

忙しくて構ってあげらんなかったから
Aがそう言うのも仕方ないと思ってた。

「そ。じゃ、別れる？」
「……うん」

端的に告げた俺の声に彼女も頷いて。

「…いままでありがとう」
って、俺の部屋を出て行った。

そのとき初めて見た彼女の涙を
拭おうと伸ばした手は届かないまま。
別れて1年が経っても忘れらんなかった。

もうきっと、あの子以上に愛せる子はいねぇんだろうなって思ったら
誰とも恋愛する気にはなれなくて。

あれから…5年だ。

「…智くん」
撮影の合間。
楽屋で寝転ぶ俺に、難しい顔した翔くんが話しかけてきて

「…これ、Aちゃんだよね？」
って、スマホの写真を見せられる。

「……ん」
今も5年前と変わらないAが、
男の子を抱っこして笑ってる写真。

保育園かなんかの遠足かな。
たくさんの人の集合写真の中に、Aはいた。

「こども出来たんだな」
その言葉に、他意はなくて。

幸せそうでよかったと思いながら翔くんにスマホを返せば
難しい顔を崩さない翔くんが

「その子…友だちの子と同い年で、5歳だって」
「…」
「名前は、智輝って書いて(ともき)って呼ぶらしいよ」
「…」
「…それに、どことなく智くんに似てるって」
「…え、」

真剣な目で、そう言った。

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