☆【ARS】短編集5 ☆ (ページ15)

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ハートのクイーン N.K ページ15

「ねぇ、ほら。見てて？
新作のマジック」

いつもポッケに忍ばせてる
トランプを手にとって
私に見せながら手慣れた様子でカードを切るのは

ずっと好きで好きで
たまらない人

「ん。好きなとこでストップって」

バラバラになったカードをパラパラめくる
彼のまぁるい手

言われた通り、テキトーなところで

「ストップ」

って言ったら

「これでいいのね？」

って、笑う

「うん」

「じゃーこれ、よく覚えて？」

彼は見えないように
私にだけカードの数字を見せる

ハートの、クイーン。

「…覚えた」

「ん。じゃー、混ぜるよ？」

「うん」

そのカードを他の束と混ぜて
私が選んだのがどれか分からないはずなのに

彼は一瞬で

「…Aが選んだのはね…
このハートのクイーンでしょ」

って、私に見せながら

「正解？」

可愛らしく、首をかしげる。

「すごい、どうして？」

「んふふ、まだおわんないから笑」

選んだカードを当てるくらいは
彼には全然余裕らしく

「クイーンを選んだあなたには…プレゼント、ね」

驚く私に
彼がパチン、と指を鳴らすと

クイーンのカードの下から
キラキラ光る指輪

「…なに、これ…」

「んー？さぁなんでしょ笑」

「…ゆびわ、、私に？」

「さぁ？欲しいなら、どうぞ？」

「…嬉しい。
ありがとう…大切にするね」

ずっと欲しかったけど
私の安月給じゃ、かなり無理しないと買えないような

知ってる人なら知ってるブランドの指輪

まさか和也がくれるなんて思ってなくて

嬉しくて、涙がでそう。

「んふふ。嵌めてあげる」

スッと指輪を手に取った和也が
私の右手の薬指に、それを嵌めて

チュ。と、手の甲にキス

「似合ってる」

「…ありがとう…」

「いーえ」

指輪のサイズも私ピッタリで

和也はいつこれを買ってくれたのか

忙しい彼の、最近の様子を思い返しても
全然分からない。

帰りの車の中

和也が唐突に呟いた言葉は

「…左手は、また今度、ね？」

「…っ、」

私を泣かせるには十分で

「ホラ、泣かないの。可愛い顔が台無し」

信号待ちの一瞬

ふわりと唇を塞がれる

唇が触れたまま、和也が言うの

＿＿＿＿こんなんで貴女を縛れるなら…いくらでもあげる

って