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Side:九重
「Aさーん!!いるなら返事してくださーい!!」
俺はスマホを持ちながら地下駐車場にいた。
糸巻さんの情報によると彼女は分駐を出てここに入ったらしい。
「…どこだよ、もー…」
冬だというのに冷や汗が止まらない。
すると、
【Aさん】
持っていたスマホが震えた。見ると彼女からだった。
「Aさん?志摩さんから聞きました、今どこに」
焦りながらそう言うと、
「…ここのえ、さんっ…」
案の定彼女は泣いていた。
「大丈夫です。泣かなくていいんですよ」
「…ふっ…うっ…」
「落ち着いてください。大丈夫ですから。今どこにいるんです?何が見えますか?」
「…はやく…っ…きてっ…」
「…分かりました。すぐに行きますから。そこから動かないでくだ…」
落ち着く気配を見せないことに焦りながらも平静を保ちつつ、歩き回っている時だった。
「Aさん!!」
停まった車の後ろから彼女のワンピースの裾が見えた。
それをたどると、
「…ここのえ、さんっ…」
小さく縮こまって肩を上下させながら俺の名前を呼ぶ彼女の姿があった。
「いたっ…良かっ」
力が抜けてしゃがむと、
「…いっ…」
彼女に抱き着かれ、耳元で何か言われた。
「…え?」
泣いていてよく聞こえず、聞き返すと、
「…おそいっ…」
彼女は初めて俺に不満を口にした。
「…すみません、遅くなって」
「…んっ」
「上着も着ずに…。あ、体もこんなに冷えてるじゃないですか」
不満のはずなのにこの上なく嬉しくて、子供のようにしがみつく彼女の背中を擦りながら言った。
すると、
「あの〜」
後ろから声がした。
「…あ、糸巻さん」
振り向くと、糸巻さんが立っていた。
「お取込み中すみません」
「いえ、あ、ご覧の通り見つかりましたので」
「あ、それもあるんですけど、違うんです」
「え?」
「それとは別にお伝えしなくてはいけないことがありまして」
「…何です?」
タブレットを持ちながら言う糸巻きさんにそう尋ねると、
「そちらのAAさんの個人情報に該当する物が一つ、見つかりました」
彼はAさんを手で指しながら答えた。
「…え?な、何ですか?」
「口座でした」
「…口座?」
画面をタップする糸巻さんと、Aさんを交互に見る。
「ただの口座ではありません。仮装通貨の口座でした」
糸巻さんにそれを見せられた時、俺の頭に一人の人物の顔が浮かんだ。
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リトルバード(プロフ) - さえきsaekiさん» 返信遅くなりました…泣 ドラマが終わってからこちらのサイトにはログインしておらず気づくのが遅くなってしまいました。ごめんなさい。そしてすてきなコメント本当にありがとうございます!ドラマ終わってしまいましたが読んでもらえて嬉しいです!ごゆっくり〜 (2021年12月16日 23時) (レス) id: 16f707b051 (このIDを非表示/違反報告)
さえきsaeki(プロフ) - この作品残っててよかったです!しばらく404作品読んでなくて検索したりしたらずいぶん消えてしまっていて…きっと作者さんがログインされてないんですかね…でもここは残ってて何度読んでも感動できる作品がまた読めて幸せです…!ありがとうございます!! (2021年9月13日 20時) (レス) id: c60363b2be (このIDを非表示/違反報告)
リトルバード(プロフ) - mmkさん» mmkさん!初コメ嬉しいです…。書きながら「あ、これは読者様にはもしやはまっていない?」と思っていたので(笑)一人でもおもしろいと言ってくれる方がいて本当にありがたいです!完結までよろしくお願いします! (2020年11月27日 20時) (レス) id: 9ffe47897f (このIDを非表示/違反報告)
mmk(プロフ) - 一気に読んでしまいました!更新楽しみにしています! (2020年11月26日 10時) (レス) id: a296828649 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リトルバード | 作成日時:2020年11月12日 22時