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Side:伊吹
「てかさー、隊長の話、長くね?」
「ああ。しかもそんな大したことじゃなかった」
1機捜の隊長室から分駐へと戻る道で、俺がそう言うと志摩も不満そうに漏らした。
「てかAちゃん、大丈夫かな」
「大丈夫だろ。ジュース飲んでたし、もうすぐ九重来るし」
九重が来る時間まで20分くらいだったから、お留守番を頼んで話を聞きに行ったら随分長引いた。
すると、
「お疲れさまです」
噂をすれば、後ろから九ちゃんが走ってやって来た。
「おつかれ〜い」
「Aさんは?」
俺がそう挨拶をすると、九ちゃんは志摩に真っ先にそう尋ねた。
でも、
「分駐に…って、うわ」
分駐のドアを指しながら答えた志摩の顔は何故か固まっていて、
「ったく…あ」
そこから出てきたのはあの捜査一課の刈谷だった。
「刈谷さんがどうして…」
「この分駐所は何から何までほんとふざけてんな!」
「…てか何であんたが中から出てくんの?」
「あ?鴻上の件だよ。証言取れたって言うから来てみたものの、収穫なし」
呆然とする志摩にいつものように当たり散らす刈谷に突っかかると、そう答えた。
すると、
「…彼女に会って、鴻上の件を聞いたんですか?」
それまで黙っていた九ちゃんが急に刈谷の前に立った。
「会って話聞こうとしたらどっか行っちまったよ。ったく…時間の無」
頭を掻きながら呆れる刈谷に、
「ふざけないでくださいよっ!!」
九ちゃんが怒鳴ってそいつの胸倉を掴んだ。
「え、ちょ!九ちゃん?!」
「九重!落ち着け!!」
俺と志摩、二人がかりで刈谷から九ちゃんを引きはがす。
「何なんだよっ!お前らっ!」
「いいですか…?」
「…あ?」
イラつく刈谷に九ちゃんは再び近づいて、
「…彼女に何かあったら、私は警察庁と刑事局長息子の権力を惜しげもなく濫用する所存です」
いつもより低い声でそう言った。
「…大口叩いてんじゃねぇぞこのクソボンボンが」
刈谷はそう言ってその場から去っていった。
「彼女、言ってたよな。前」
「え?」
何のことか分からない俺は志摩に聞き返すと、
「エトリが怖い。いまだに夢に出てくるって」
志摩はそう静かに言った。
「…前に自宅でもフラッシュバックを起こしたことがあって」
「悪い九重。この責任は俺らにもある」
「お、俺、糸マキマキに防犯カメラの映像頼んでくる!」
焦る様子の九ちゃんに志摩は謝り、俺はすぐさま1機捜に戻った。
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リトルバード(プロフ) - さえきsaekiさん» 返信遅くなりました…泣 ドラマが終わってからこちらのサイトにはログインしておらず気づくのが遅くなってしまいました。ごめんなさい。そしてすてきなコメント本当にありがとうございます!ドラマ終わってしまいましたが読んでもらえて嬉しいです!ごゆっくり〜 (2021年12月16日 23時) (レス) id: 16f707b051 (このIDを非表示/違反報告)
さえきsaeki(プロフ) - この作品残っててよかったです!しばらく404作品読んでなくて検索したりしたらずいぶん消えてしまっていて…きっと作者さんがログインされてないんですかね…でもここは残ってて何度読んでも感動できる作品がまた読めて幸せです…!ありがとうございます!! (2021年9月13日 20時) (レス) id: c60363b2be (このIDを非表示/違反報告)
リトルバード(プロフ) - mmkさん» mmkさん!初コメ嬉しいです…。書きながら「あ、これは読者様にはもしやはまっていない?」と思っていたので(笑)一人でもおもしろいと言ってくれる方がいて本当にありがたいです!完結までよろしくお願いします! (2020年11月27日 20時) (レス) id: 9ffe47897f (このIDを非表示/違反報告)
mmk(プロフ) - 一気に読んでしまいました!更新楽しみにしています! (2020年11月26日 10時) (レス) id: a296828649 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リトルバード | 作成日時:2020年11月12日 22時