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「志摩さんと伊吹さんは彼女に会ったことは?」
その流れで俺は彼女が入院するという警察病院に来ていた。
「何回かある。見つけたのも俺たちだし、病院の付添もしたし、聞き取りもした」
「でも俺のこの超がつくほどのコミュニケーション能力を以てしても、ダメだったんだよねぇ」
「自分で言うか、それ」
「なんて言うの?心バッチバチに閉ざされてるって感じ?」
「…そうなんですか」
志摩さんと伊吹さんのやり取りに相槌を打ちながら歩く。
すると、
「でもさぁ、そうなっても仕方ねーかなぁって」
少しだけ伊吹さんの顔が曇った気がした。
でも、
「ナナちゃん、やっほー!」
またすぐに元通りの伊吹さんに戻って、そのまま病室のドアを開けた。
「…」
そこには肩につくかつかないかくらいの栗色の髪の毛と同じ瞳をした女性がいた。
推定年齢は22歳らしいけど、写真で見るよりずっと幼い。高校生くらいに見える。
どうやら窓際で外を眺めていたらしい。
「あれ?ナナちゃん、何見てたのー?」
そう言って近づく伊吹さんにも、
「良かったねナナちゃん。もう少しで退院だって」
俺たちといる時とは比べ物にならないくらい優しい志摩さんにも、
「…」
彼女は一切反応を見せず、ただ目の前にいる彼らをぼーっと見るだけだった。
「あ!ねぇねぇナナちゃん!今日はねー、新しい仲間を連れてきたんだー!」
「あ、ちょっと伊吹さんっ」
「ほら!挨拶!」
心の準備ができていないまま伊吹さんに肩を組まれ、彼女の前に出された。
「…警察庁から参りました。九重世人と申します。以後、お見知りおきを」
「えー、ちょいちょい、それはかたすぎでしょ!」
「お見合いか」
結構頑張った自己紹介を潰してくる先輩って…。
「いやだって伊吹さんが急にっ」
何とか言い訳をしようとするも、
「ほーら!九ちゃん!もう一回!」
背中を押されてしまい、リングイン。
すると、
「…きゅー、ちゃん…」
病室に凛と済んだ声が響いた。
「…え、ちょ、ちょっと待って…ナナちゃん…」
「…しゃ、喋った…」
その後に響いたのは何故か涙目の伊吹さんと、いつもより目が開いている志摩さんの声だった。
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リトルバード(プロフ) - さえきsaekiさん» 返信遅くなりました…泣 ドラマが終わってからこちらのサイトにはログインしておらず気づくのが遅くなってしまいました。ごめんなさい。そしてすてきなコメント本当にありがとうございます!ドラマ終わってしまいましたが読んでもらえて嬉しいです!ごゆっくり〜 (2021年12月16日 23時) (レス) id: 16f707b051 (このIDを非表示/違反報告)
さえきsaeki(プロフ) - この作品残っててよかったです!しばらく404作品読んでなくて検索したりしたらずいぶん消えてしまっていて…きっと作者さんがログインされてないんですかね…でもここは残ってて何度読んでも感動できる作品がまた読めて幸せです…!ありがとうございます!! (2021年9月13日 20時) (レス) id: c60363b2be (このIDを非表示/違反報告)
リトルバード(プロフ) - mmkさん» mmkさん!初コメ嬉しいです…。書きながら「あ、これは読者様にはもしやはまっていない?」と思っていたので(笑)一人でもおもしろいと言ってくれる方がいて本当にありがたいです!完結までよろしくお願いします! (2020年11月27日 20時) (レス) id: 9ffe47897f (このIDを非表示/違反報告)
mmk(プロフ) - 一気に読んでしまいました!更新楽しみにしています! (2020年11月26日 10時) (レス) id: a296828649 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リトルバード | 作成日時:2020年11月12日 22時