非番はずっと恋模様

　13-3．自業自得ですね ページ21

「えっ？！だれだれだれっ？！かわいいきゅるきゅる系？それともきれいなお姉さん系？」


がっつり食いついてきた野生バカ。


「…ど、どちらかというとお姉さん系だ」

「年上かー！」

何食わぬ顔でそう言うと、万歳する伊吹。


そして、


「おー！伊吹ー！」


お姉さん系こと、陣馬耕平入場。


「って、うおい志摩！」

「なんだ」

「お姉さんっていうか、おじさんじゃねぇか！うわ、しかもかなりできあがってる」

Aを立たせ、伊吹の隣に座らせた班長を見て文句を言う伊吹。

「できあげておいた。ふははは！飲むか飲むか！」

「班長、俺やっぱ帰りますわ」

「なんだとおっ！俺の酒がっ…飲めねぇってのかよぉ…あぁぁぁ」

「の、飲みます飲みます！飲ませていただきます！」

そんな会話を背中越しに聞きながら、俺は彼女と一緒にそそくさと店を出た。




「おい」

「んー？」

「そんな先に行くな。危ない」

人通りの少ない道をふらふらと歩く彼女に注意をする。

「かずくん、みてー？はなびあがってるよー」

「…はぁ？花火？」

「ほらー」

「…A、車のライトだ」

「えー、きれーだねー」

にひひと笑いながら通り去った車のライトにご機嫌な様子の彼女。

「ほら、危ないから」

「ねぇねぇ、かずくんー」

「何だ」

「伊吹さんってさぁ、ほんとにほんとに良い相棒さんだね」

危なっかしくて手を握ると、ぶらぶらと揺らしながら彼女がそう言った。

「何を話したんだ。てか話すことあるのか」

「ずーっとね」

「うん」

「かずくんの話」

「…は？」

「伊吹さんね、私が知らない仕事中のかっこいいかずくんの話、いーっぱいしてくれたんだ」

「…そうか」

酔ってるのかいつもより素直な彼女と、どうしたらいいか分からず鼻をこする俺。


すると、


「だからね、もっと好きになったよ」


彼女は何食わぬ顔で歩きながらそう言った。


「…おい」

「ん？」

急に立ち止まった俺に驚く彼女。


そして、


「酒を飲んだその目でそれはずるい」


俺もつられて素直になってしまったのか、仕返ししてやりたかったのか、変な対抗心から彼女の唇に自分の唇を寄せた。


「…んふふふ」

「…明日には全部忘れてんだろうな」

嬉しそうな彼女に呆れながらも、その手を強く握り歩き出した。


ちなみに、


「志摩ぁ、頭痛いよぉ」

「知らんわ」

「九重ぇ、気持ち悪いよぉ」

「知らないです」


翌日が勤務日だったのを忘れていたのは自業自得だと思う。

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