12-2.太刀打ちできない ページ18
「…っは!」
その瞬間目が覚めて、現実に引き戻される。
「…A…?」
ベッドの横は一人分寝れるスペースが空いていたけど、Aがいたのかいなかったのか思い出せない。ベッドに入る前の記憶が全くない。すっぽり抜け落ちていた。
何で思い出せない?
夢なのか?夢だよな?
「…Aっ…Aっ…!」
子供が母親を探すみたいにリビングやトイレをさまよう。だけど家中、どこにも彼女の姿は見当たらない。
「…出ろっ…出ろっ…」
リビングのテーブルの上にあったスマートフォンを手に取る。そして震える指で彼女の電話番号をタッチし、耳に当てた。
1コール、2コールが過ぎても出る気配はない。
まさか、本当に?
「出ろっ…出てくれ…出てくれよAっ!」
そう叫んだ時だった。
「あれ?かずくん?」
玄関の方からドアが開いた音がしたのと、聞きたくてたまらなかった声がしたのはほぼ同時だった。
「A…」
「寝てなきゃダメでしょー。もー」
リビングのドアを開けると、そこにはサンダルを履いて片手にビニール袋を持って突っ立っている彼女の姿があった。
「…かずく」
「勝手にいなくなるなバカ!」
彼女の言葉を遮り、すぐさま玄関まで行って、これでもかと抱きしめる。強く、強く。
「…か、かずくん、どしたの?」
「お前っ…俺がどれだけっ…どれだけ心配したと思ってる?!どこに行ってた?!」
「…コ、コンビニ。かずくん、ちょっと熱っぽかったから薬とかゼリーとか。絶対さっき濡れたせいだって思って」
「…夜に出歩くな何回言えば分かるんだ…」
「…え、ねぇ、なんか、あった?どうしたの?汗びっしょりだよ?」
自分でもびっくりするぐらい入り混じった感情は、背中を撫でてくれる彼女のおかげで少しずつ落ち着きを取り戻しつつあった。
「…すごく、すごく嫌な夢を見た」
改めて言葉にするだけでも身震いするほどだった。
「…夢?どんな?」
「…少し前に若い女性が殺された事件の初動に当たった…それがお前とよく似てる子で…それで…ああ…もう言いたくもないっ…」
結局最後まで言えず、彼女の肩に顔を埋めた。
「…そっか。悪い夢見ちゃったんだね」
「…ああ」
「…ごめんね、かずくん。いなくなって。心配掛けて」
「…お前がいないと生きていけないよ、俺は」
そう言って、彼女の頭を包み込むようにさらに抱きしめた。
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結城(プロフ) - 伊吹さんの方からやってきましたがやっぱりため息でますー(//∇//)たまたま早起きして読んでいたのですがにやにやとため息でバッチリ目が覚めました!ありがとうございます^ ^ (2020年9月4日 5時) (レス) id: 3f7c57052f (このIDを非表示/違反報告)
MAYU(プロフ) - ありがとうございます。楽しみにしてます(*^^) (2020年8月28日 1時) (レス) id: 68cb4525c6 (このIDを非表示/違反報告)
リトルバード(プロフ) - MAYUさん» MAYUさん!初コメント&リクエストありがとうございます!今書いていますのでもう少々お待ちいただけると嬉しいです! (2020年8月27日 23時) (レス) id: fd0b490cca (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 志摩さんリクエスト。恋人夢主。志摩がお世話になってるからと紅茶のシフォンケーキを焼いて4機捜に差し入れしに行く話し。上司である桔梗にはゆたか君達と食べる用に別に用意。夢主のケーキに癒される志摩さんの話しお願いします。 (2020年8月25日 14時) (レス) id: 9070337cc8 (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - リクエストです!ナイトプールで事件発生。404が現着。ヒロインに遭遇。水着ガン見。伊吹にぶちギレ志磨さん。伊吹に言わせたいのが、ヒロインちゃん、おっきいのね。ってな感じです。笑 (2020年8月24日 12時) (レス) id: 3a7ce308f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リトルバード | 作成日時:2020年8月5日 0時