非番はずっと恋模様

　21-3.　隊長になってない ページ39

「あ、かずくん、いいお湯だった？」

「ああ」

「そっか。ねぇねぇ、テレビおもしろいよ」

その日の夜、風呂から上がるとリビングでテレビを見ながら彼女はケタケタと楽しそうに笑っていた。


水を差すようで悪いが、


「A、ちょっといいか」


俺は彼女の隣に座った。


「ん？なに？」

「まだ疲れてるか？」

「え？」

「一昨日、疲れたって言ってただろ」

「あー、あれね」

「まだ残ってるか？疲れ」

「…んー、うん。のこって」

彼女が言い掛けた言葉を遮り。


「正解はこれだよな？」


俺はその体を優しく抱きしめた。


「…へ？」

「前言ってたろ。俺に抱きしめられると疲れが取れるって」

「…か、ずくん」

「一昨日は気づけなかったから、今、しておく」

「…ふふっ、大正解」

最初は驚いていた彼女も納得したのか、ただ嬉しいだけなのかは分からないが俺の背中に手を回した。

「でも何で分かったの？」

「…いや、何か引っかかってて。いろいろ考えた結果だ」

隊長に心の中で謝る。

「ふぅん。…あーあ、今日はずっとこのままがいいなぁ」

「構わないが」

「えっ？」

思いもよらない返答に彼女はくっつけていた体を離して俺の顔を見る。

「風呂も入ったし、寝るだけだろ。少し早いけど、寝室行くか？」

「え、このまま運んでくれたり…する？」

「お前が望むなら」

「きゃー！かずくん、かっこいいー！最高ー！」

そう言ってまたぎゅーっとくっついてきた彼女。

「まぁ、決めたからな」

「へ？」

彼女を抱きかかえ、間抜けな声を聞きながら、


「今日はとことん甘やかすって」 


俺はそのまま寝室へと歩き始めた。

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